お客様は神様だろ?は海外では一切通じない
日本に帰国してお店に入る度に、横柄な態度のお客さんに会う機会が多いと感じます。
お店のスタッフから挨拶をされても返事すらしないのは序の口で、少しでも面倒に感じると目の前で舌打ちしたり、お店の人相手だとなぜかタメ口、気に入らないとすぐに声が大きくなるなど。
謙虚で礼儀正しい日本人とは、ちょっと認めたくないほど…。
弥助が実際に目にした光景なので、人と人とのコミュニケーションを大事にできていない意味でとても残念に感じました。しかも老若男女…。
日本ではお店の人に反撃される事はありませんよね?だから成り立つのでしょう。
しかし!海外を訪れた日本人が、現地のお店にも同じような態度だったら80%の割合で
“What the F〇〇k!? Who do you think you are, huh?”
から始まるケンカになるでしょう。
この章では、その背景と実際にあった酷いクレーム対応例によって、お客様は神様だという対応は海外では1mmも期待できない事実を理解してもらえると思います。
海外のカスタマーサポートは地獄ですよ!
「お客様は神様です」の誤解
日本では、なぜこんなにもお客さんの立場が上であるかのような商習慣がまかり通っているのでしょうか?
もちろん、日本人の大多数は違うと思いますが、店員さんにはどんな態度をとってもいいと勘違いしている人も少なくない気がしています。
「こっちは客だぞ!」と声を荒げる人に限って、「お客様は神様です」という言葉を水戸黄門の印籠よろしく使おうとしますが、その言葉自体がそもそも誤解のようです。
元々演歌歌手の三波春夫さんが、自分自身のステージに臨む姿勢を話した内容が誤解というか曲解されて独り歩きした結果、あたかも日本の常識であるかのように浸透したようです。
ですから日本の歴史の中のたった直近数十年間の誤解に過ぎず、信ぴょう性もないので、お店の人は「お客様は神様ではない」と言っていいんです。
実際には日本の競合がひしめく商圏事情も加わって、お店側がカスタマーサービスを徹底し、無理な要求にもできるだけ応えようと企業努力し続けた結果、お客さん側の勘違いが増幅しながら定着したというのが実情でしょう。
海外では、お客様は何?
もし誤った顧客意識の塊のような日本人が海外に旅行したり長期滞在した際に、日本にいるのと同様にお店の人の対応や商品に対してクレームをつけたらどうなるでしょう?
英語が話せる前提で考えてみましょう。
結論から言って、海外ではお客さんとお店の人は100%対等です。
つまり「お客様はお客様」です。
そこに「お客様は神様だ」と思い込んでいるその日本人と、「お客様はお客様でしかない」お店の人が対峙すれば、どうなるかは言うまでもありませんよね。
日本では組織に属している限り個人ではなく従業員として見られますが、海外ではあくまで個人としてのコミュニケーションです。
そのため担当者の人間性に依存しますので、そのサービスには一人一人の個性が反映され、ウィットなユーモアにあふれた最高のサービスに出会う事もあれば、まさに客を客とも思わないぞんざいな扱いを受ける事もあります。
これはファーストフード店の接客を比較してみるとより鮮明です。
日本ではマクドナルドだろうと吉野家だろうと、お客さんへは笑顔で敬語の丁寧な接客が求められていますし、そうでなければお客さんは怒りますね。
しかし、海外のファーストフード店で働いているのはそのほとんどが生意気な十代の若者たちです。先ほどの個性で言えば、後者のはずれに相当します。フレンドリーで丁寧なサービスは、はじめから誰も期待していません。
実際に体験した信じられないほど酷いクレーム対応
このように海外では、担当者の個性によってサービスとは呼べないような酷い対応を受ける事があります。しかも、かなりの確率で。
ですので、海外に出る日本人はその価値観の違いを知っておかなければ、実際にクレームをつけた時に相当なショックを受けることになりかねません。
お店側に非のある正当なクレーム案件であればなおさら、日本人からすればあり得ないほどの酷い対応を受ける訳ですから。
実際、それが嫌すぎて我慢できずに、日本に帰国してしまう人もいるほどです。
そこで、弥助が実際に体験した酷いクレーム対応を具体的に2つ紹介します。
「お客様は神様」と思い込みたい日本人が、これを聞いたらどう思うか想像してみてください。
ケース1:勝手に電話を切った挙句…
まずはビジネス上での出来事です。相手はレストランに野菜を卸す会社のオフィススタッフです。
ある日、レストランに届けられた野菜のほとんどが酷く傷んでいました。そこで事実を伝えて交換してもらおうとオフィスに電話したのですが、対応したのは若い女性スタッフでした。
なぜか初めから半笑いの少しふざけているような対応で、もしかしたら彼女なりのフレンドリーな対応だったのかもしれませんが、ひいき目に見ても気まぐれに振舞っている印象でした。
まぁいいかと要件だけ伝えようとしましたが、野菜が傷んでいる事を伝えても今朝見た時は傷んでいなかったの一点張りで埒があきません。そこでスマホで写真を撮って送るから携帯番号を教えて欲しいと言ったところ、
なんと突然一方的に電話を切られました。
憤慨した弥助が同じ番号にリダイアルすると、その彼女ではなく若い男性スタッフが電話にでました。たった今話していた女性スタッフはいるかと尋ねると、その男は「いない」と言い切りました。
どうやらこの男性スタッフと彼女が、ふざけていた延長で電話対応していたような印象でした。
たった今話していたのだからいないのはおかしいと強く言うと、男は一言”Maybe.”と小馬鹿にしたように言ってきました。男が彼女を庇っているのが明白でした。
既にこういう事には慣れていた弥助は、”Fine. Can I get your name again?“ともう一度名乗らせてから電話を切り、別途マネージャに宛てて事の次第をメールでクレームしました。
もちろん、これでオーダーは最後にすると言い添えて。
焦ったマネージャからは速攻で”Leave this to me.“とメールの返信があり、二人には処分を下したから許してほしいと改めて連絡がありましたが、こうした酷い対応はビジネスの場面でも起こり得るのです。
ケース2:電話の相手が無言に…
これは、相手のミスによって生じた過剰請求について電気会社にクレームした時の話です。
早い段階でチェックをお願いしていたにも関わらず、何も対応がなされないまま請求が膨らみ、結局備え付けの湯沸かし器の故障が原因だった事が発覚した上での正当なクレームでした。
相手は初めから少し面倒くさがっている様子があったカスタマーサポートの男性スタッフです。
何度も同じ話を繰り返しますが、相手は請求書の通りだというばかりです。こういう時はマネージャを出してほしいと要求するのが早いのですが、相手は自分がマネージャだと言います。
つまり、これ以上のエスカレーションはしないという意思表明ですね。しかし、ある一言から彼はマネージャではない事が推測されました。
そこで、「あなたはマネージャではない、マネージャに代わってくれ」と抗議すると、
うっすら聞こえる位に舌打ちし、何とここから5分以上に渡って無言になったのです!
「ハロー?ハーロー?」と何度も問いかけましたが、確かに息づかいらしき気配は感じられたものの、一切応じようとはしませんでした。
おそらく、顧客が諦めて切るまで黙るというマニュアルもあるのでしょう。その通りにしている感じでした。
結論~8割は酷い、でもすごいサービスもある~
このように例を挙げると、神様扱いされないであろう事が容易に想像されますよね。
ほとんどはそうなると思います。
しかし、個性によっては最高のサービスもあり得ると言いました。
これは、霧の影響で出発が大幅に遅れた機内で経験したサービスです。
長時間機内に閉じ込められる形になった乗客がようやく目的地に着陸する直前、
男性キャビンアテンダントが”Ladies and gentlemen, boys and girls.“とマイクを取りました。
「この機は間もなく着陸態勢に入ります。お持ちの携帯電話やパソコン、洗濯機や冷蔵庫の電源をお切りください」
なにやら愉快な事が始まりました。乗客からはクスクス笑いが起きています。
「ランディングの際に気持ちが悪くなられたお客様は…、空港の近くの〇〇病院の急患コースがお勧めです」
どっと沸く乗客。
「シートベルトをおしめ下さい。今すぐ隣の彼女にプロポーズしなければならない事情があれば、それは考慮します。命がけのプロポーズ頑張ってください。あれ?いませんか?では皆さん、シートベルトを!」
それまでの疲労でどんよりした機内の空気は、彼のウィットに富んだアナウンスで巻き起こる爆笑と拍手と共に一掃されました。
こうしたサービスに出会えるのも、海外のスタイルであり価値観によるところです。どちらがいいと言い切るのは難しい事ですが、少なくともその違いだけは知っておき、郷に入れば郷に従いたいものです。
そうすれば必要以上に憤る事もなく、また奇跡のようなサービスとの出会いを心から楽しむ事にもつながります!
同じ観点から留学や海外就職でつまずかないよう、日本と海外のコミュニケーションの違いを解説した導入の章があります。もしお時間があれば是非!