鬱になった仲間をサポートするには病気と英語の知識が必要
日本では例え鬱になっても、公にする人はあまり多くないかもしれません。それが職場なら尚更かもしれませんね。上司の管理責任だとか労災だとか、負の側面しかフォーカスされないイメージです。
しかし海外では鬱になる同僚がたくさんいます。
文化の違いの一つで、子供達は褒められながら成長する事が起因で、自信のある大人に育つ反面、精神的に脆い特徴があります。
海外で働く事になったら、そんな鬱になった同僚と接する可能性はとても高いでしょう。そしてそんな時、あなたは仲間である同僚にどう接するべきでしょうか?
かつて留学時代のルームメイトが鬱になってしまった時に、弥助は知識の無さから数々のタブーを犯してしまいました。
その時に専門医から一緒に受けたアドバイスからは、たくさんの事を学ぶ事が出来ました。
この章ではその経験を元に、鬱について知っておくべき知識と、どのように鬱の同僚を、しかも英語でサポートしてあげればいいかについて示唆してみたいと思います。
まずは鬱病を知る
自分の周りの人が鬱になってしまったかどうかを、どうすれば判断できるのでしょうか?
知識が無いと鬱の症状はただ怠けているようにも見えるので、相手を心配すればするほど苦言を呈したくなってしまいます。
まずは必要最低限の知識として、鬱病とは?を確認しておきましょう。
鬱の症状としては以下のような特徴があります。
- 何事にもやる気がなくなる
- 悲観的になる
- 絶望を口にする
- 睡眠に障害が出る
- 食欲が低下する
- 性欲が減退する
- 頭痛、めまいを起こす
- 首や肩のこりい悩まされる
- 人を避けるようになる
- 考えがまとまらず、仕事の効率も落ちる
- 自殺願望を持つ
日本ではこうした症状に無自覚な人がたくさんいるようですが、鬱になってカウンセリングに通う事が特別では無い海外では、皆少しでも自覚すればすぐにクリニックに駆け込みます。
この傾向は、頻度は多めになるかもしれませんが、鬱の人が真っすぐ突き進んだ先にある自殺願望の所まで辿り着かずに引き返せるという点で、ポジティブに捉えるべきでしょう。
鬱の人に対して、自殺を止めてあげられる事が最大の貢献ですから。
そして、英語では鬱病の事を“depression”と言います。
もし同僚が以下の様に言って来たら要注意ですね。
“I’ve been quite depressed for the last couple of weeks.”
「ここ数週間、気分が落ちてるんだよね」
“I think I might have depression.”
「鬱病じゃないかと思うんだよね」
「Doリスト」~言ってあげた方がいい英語~
鬱病の兆候は分かりました。最悪のケースが自殺であり、それを阻止する事が最大の貢献である事も分かった所で、次に具体的な行動について考えていきましょう。
物事には常に積極的にして挙げた方がいい「Doリスト」と、してはいけない「Don’tリスト」があります。鬱病のそれぞれのリストとその際に必要になる英語を見ていきましょう。
まずは積極的に言ってあげた方がいい「Doリスト」について、以下にまとめます。
- 出来るだけ話を聞いてあげる
- 共感を示す
- 休むように促す
出来るだけ話を聞いてあげる
鬱にかかりやすい人は決していい加減な人ではなく、むしろ真面目な人ほどなりやすいそうです。
普段温厚で真面目な人が、やる気も元気も失って体の不調まで訴えていれば、それは心配になりますよね。
まずは「どうしたの?」「大丈夫?」と声をかけて、話を聞いてあげようと思うのではないですか?
誰かに話をするだけで緊張や不安はかなり和らぐそうで、相槌だけでも「しっかり聞いてるよ」と感情に寄り添ってあげる事はとても効果があるとの事です。
後でも触れますが、相手に何か問題があるかのように接するのは逆効果なので、切り出し方に気を付けましょう。
“What’s wrong with you?”
「何か問題でもある?」
こうした表現は、繊細な時期に少し追い込んでしまうかもしれないので、あくまでさりげなく話を聞けるような以下の様な表現がいいと思います。
“How’s it going, buddy?”
「調子はどうだい?」
共感を示す
同僚が話をしてくれたら、本人が望んでいるのは肯定感なので、次のステップとしては、話の内容に共感してあげましょう。
“I cannot sleep well in these days.“
「最近、あまり眠れないんだ」
“Oh no, you cannot…“
「そうなんだ」
“I think I have worked too much since the last year.“
「去年から働きすぎだと思うんだよね」
“Yeah, you have.“
「そうだね、きっとそうだよ」
これらの会話の様に、この時点ではただオウム返しに共感してあげるだけでいいのだそうです。
英語でいう所の”Empathy“「共感」ですね。以下のような「自分もだよ」という共感フレーズもいいですね。
- “Me, too.”
- “Me, either.”
- “So do I.”
休むように促す
後でも触れますが、鬱になったら頑張らない事が大事なので、逆に休養を勧める事もいいそうです。
さりげなく休養を取る事のメリットを話したり、今急いで何とかしようとする必要が無い事を示唆したりなど、「休養する事」が自然で、かつ正解である方向に持っていけるといいですね。
「Don’tリスト」~言っちゃいけない英語~
自虐的な話ですが、かつての弥助は鬱になったルームメイトの為によかれと思って言ったりやったりした事が、全てこの「Don’tリスト」の言動でした。
全て逆効果で、かえって彼を追い込んでしまったという事です。後に彼には謝りましたが、とても反省しています…。以下がリストです。
- ポジティブに励ます
- 怒鳴ったり、大きな声を出す
- 鬱なんか何てことないと取り合わない
ポジティブに励ます
鬱になっている人は、気分が落ちているので元気がなく見えます。仲が良ければ良いほど、友達として励ましてあげたくなるのが人情だとは思います。
“Keep on smiling! You can do it!“
「笑顔を忘れない!お前なら出来るよ!」
“Be a man! Let’s go to the next class together!”
「男になれ!次の授業一緒に行こう!」
弥助も鬱になったルームメイトに、良かれと思って散々ハッパをかけましたねぇ。
はい、これは両方ともアウトです…。鬱の人に言ってはいけません。
そもそも鬱の人は頑張れない自分自身に悩んでいるし、人一倍分かっているんです。
既に目一杯頑張っていて、これ以上頑張れないであろう人に更に追い打ちのように「頑張って!」と励ましても、
「え⁉これ以上頑張らなきゃいけないの?もう無理…」となるそうです。
よく英語の直訳で使う”Hang in there!”は、この状況では使わないと思います。
怒鳴ったり、大きな声を出す
弥助はこれもやっていました。
毎日四六時中顔を合わせていると、段々こっちの感覚もルームメイトが鬱な事に慣れてきちゃうんですよね。
本来であれば鬱という病気である彼を労わらなければいけないのに、見た目は何ともない、大声で笑ったりも出来るといった事も別の側面なので、
- 「出来ないと泣く」
- 「フォローしている自分達に文句を言う」
こうしたアウトプットに対し、我慢できずに時には大きな声で言い返したりもしてしまいます。
“Who do you think you are! We all did this for you!“
「何様なんだよ!お前の為にやってるんじゃん!」
“Enough is enough! Stop being negative!“
「もういいだろ!ネガティブは止めよう!」
鬱によって自分自身に混乱して自信を失っている人には、通常時の何倍も響いてしまいます。病気でない周りの人がグッとこらえましょう。
鬱なんか何てことないと取り合わない
弥助はこれもやってました。もうダメダメのフルハウスですね。
“Depression? C’mon, it’s just a piece of cake!“
「鬱?そんなの大した事ないって!」
良かれと思って「鬱になるのはお前だけじゃない」とか「鬱なんて大した事ない」と言ってしまうと、言われた方はこのように思います。
- 「自分の辛さを何も分かってくれていない」
- 「鬱は病気だという認識をしてくれない」
これでは、せっかくサポートしているつもりの周りの人を信用できなくなってしまうのだそうです。
結論~DoリストとDon’tリストを理解する~
海外で働いている間、一度や二度はあなたの周りでこうした事態が起こりうると思います。
留学中の勉強とは異なり、オフィスで働いて給料をもらっている立場では、ビジネスに対し結果をコミットしなければならない責任があるので、長期間ただ休む事は難しいです。
しかし、鬱になる可能性が高い事は皆知っています。
そこで海外では会社にカウンセラーが常駐しているケースまでありますし、そこまでではなくとも多くの企業がクリニックと提携しています。
鬱の治療自体は初めから専門家に任せましょう。
もし鬱気味の同僚がいれば、あなたは一緒に働く仲間としてこれらリストを理解しながら、日常的なヘルプをしてあげましょう。
その機会は思っている以上に日常的です。