「お客様は神様です」の日本人の接客はどこの国でも最強?
海外に暮らし始めた、ワーキングホリデーメイカー達は特にですが、最初の仕事として飲食店などの接客業から、海外で働く第一歩を踏み出す事が多いと思います。
まだ英語を話す事、聞く事に自信を持てない時点では、出来るだけ日本食レストランなど、英語を求められるレベルがそれ程高く無い所から始めようと思うのは必然だと思います。
すると、自然と日本で見聞きしてきた、または自分が経験してきた接客になりますよね。
分かり易くイメージを持ってもらう為に、ミスタードーナツを日本人による理想の接客を代表する例として、海外でもそれを実践する事で上手く接客出来るのではないか?を比較してみます。さて、海外のベストなサービスとの違いが浮き彫りになるでしょうか?
ミスドの接客の方がいいよね?
あなたがショーケースの前に並んだドーナツを選んでいるお客さんだとします。応対してくれる店員さんは以下のような接客じゃないですか?
- 満面の笑顔で「いらっしゃいませ!」と元気よく丁寧に挨拶してくれます
- 5スターホテルじゃないのに、最上級の敬語で接客してくれます
- 「〇〇をいくつ、△△をいくつ」という注文を間違えることなく即応し、手早くお皿に乗せたりテイクアウェイの箱に詰めてくれます
- レジではこれまで以上の笑顔で両手でお金を受け取ってくれます
- お釣りを渡す時も、たった3円だとしてもトレイに乗せて両手で渡してくれます
- 初め同様の満面の笑みで、元気よく丁寧に「ありがとうございました!」とお礼を言ってくれます。
大体合っていますか?では、海外の人気店で、評価の高い接客に目を向けましょう。同じように比較していくと以下の様になります。
- 挨拶は笑顔で”Hi!”が多いです
- 友達に対する様なカジュアルな接し方が多く、注文するまでが長い
- 鼻唄を歌いながら注文に対応していきます、よく間違えますね
- レジでは笑顔ですが、片手でやり取りですね
- お釣りも片手ですし、チップのビンに入れたいんじゃないの?とジョークさえ言ってきます
- “Cheers!”、オーストラリアならスラングの”Ta!”など、笑顔でカジュアルなお礼と、更に世間話を少々
この海外のお店に雇ってもらったあなたが、ミスドのサービスをそのまま実践したら最高の接客だとお客さんから称賛されるでしょうか?
答えは、まあ色々なケースはもちろんありますが、大体で言わせてもらえれば、あなたはきっとお店の中で浮いちゃうでしょう。
接客の前後が無い
では、ここからはその日本人が思い描く理想の接客が、海外のお客さんにとってはズレている事が多い理由についてお話していきますね。
まず最初は一番大きな理由です。
それは接客の前後が無いという事です。
お客さんは自分を常連化する事が大好きです。そのお店がとても美味しいお店であればもちろん通いますが、それ以上に大きな理由はお店の人とのコミュニケーションを楽しみに来るのです。
ですので、”Hi!”で始まった会話はしばらく続き、やっと注文になり、鼻唄交じりに雑談しながらレジに進むというプロセスに「自然になっちゃう」という事ですね。そしてレジで”Thank you”と言われても、まだ喋ってるみたいな。
次のお客さんが待ってるじゃないですか?急いで次の接客にいくかどうかは、その時の会話次第です。
次に待っているお客さんも忙しいランチ時のテイクアウェイの店でない限り、特にプリプリしている人はいません。何故なら、自分も次にそうするからです。
では、ミスドの接客はどうでしょう?
弥助は帰国してミスドに行く度に感じるのですが、本当にその前後が無い…。
突然向けられる笑顔、笑顔がスンと消える瞬間
「いらっしゃいませ」から「ありがとうございます」までの間の接客は完璧だと思うのです。笑顔で丁寧で、良くトレーニングされていると感心します。
でも、「いらっしゃいませ」と同時に突然向けられる笑顔や、逆に「ありがとうございます」と言って一礼した後の、スンと素に戻るというか、笑顔が消える瞬間にすごく違和感を感じるのです。
一度、「ありがとうございます」と言われドーナツを受け取った後、思い出したようにお店についての何だったか、ある質問をした事があったのですが、その時の「ナンナノコノヒト?ナンパ?」と戸惑った顔をされた出来事が忘れられません。
「お客さん」というレッテルが剥がれた瞬間から、笑顔を向けられる対象で無くなってしまった感じがありました。完全に不審者扱いでしたね…。
これは、おそらく海外の接客に慣れてしまったから感じる事なのかもしれません。
日本の「お客様という一括り」の接客と、海外の「一人一人の個人」として捉える接客という違いとして集約できるのかもしれません。
日本にも自分のお店として営業している店主が、常連さん相手にそういう接客をしているお店はあると思います。そういうお店は少しホッとします。
でもとにかくミスドやマックに限らず、ちゃんとトレーニングを受けたスタッフによる接客のお店では、この前後に人と人との会話が全然無いという所が、最も違う所です。
名前で呼ばない
そしてもう一つ大きな違いは、お客さんに名前を聞く事も、名前で呼ぶ事もほとんど無いという事です。
前で述べたように、お客さんはお店の人とのコミュニケーションを楽しみに通ってくれている人が多いのです。
なのに、名前も知らないまま仲良く話せるでしょうか?初めて、う~ん、二回目位からは、
“By the way, I’m Yasuke.”
とお互いに名乗る事が多いですね。
ですので、三回目からはもうお店のスタッフからの挨拶も変わります。
“Hi, Yasuke! How are ya?“
ここの重要性に気付かない日本人は意外に多いと思われます。
「お客様」としか呼ばれない日本での自分のイメージが強いのかもしれませんが、ここを脱却すると一気に「海外でのいい接客」にハンドルを切る事が出来ます。
対等な目線になっていない
これについては、他の章で詳しく解説しているので、そちらを参照してみてくださいね。
海外では、お客さんとお店の人は100%対等です。この常識に日本人が慣れると、日本に帰った時、あらゆるお店での日本人客の態度の悪さばかりが目に付いて仕方ありません。
まぁ、神様だから仕方ないのかもしれませんがね。海外で「俺は客だぞ!」何て言いながらゴリ押ししようとした日にゃあ、ぶん殴られるかもしれませんよ。
結論~一人の人間としてお客さんを見よう!~
海外の接客で大切な事は、『お客さんは普通に自分と対等な一人の名前を持つ人間である』という姿勢で接する事です。
要は、自分の友達に接する時と同じに接すればいいという事です。
そう考えると、ミスドの接客ではダメだという事がお分かり頂けるのではないでしょうか?
海外の接客は、一見ルーズに見えるし、いわゆる普通にため口の英語だし、日本のキチキチキビキビした動きをしている人なんていないし、日本人は最初は特にイライラさせられる事でしょう。最後まで慣れる事が出来ずに帰国する人も少なくない位ですから。
でも、遅かれ早かれ気付くはずです。
その空間には、心からの本物の笑顔がある事を。
弥助は断然、海外の接客が好きです!