「真面目な日本人」から、ユーモアセンス溢れる「面白いさすがの日本人」へ
日本人の真面目さ、誠実さ、勤勉さは、世界中でよく知られており、それは日本人が海外で勉強したり、働いたりする際、「あなたも日本人だからそうなんでしょ?」と、とても良い第一印象として歓迎されます。
これはもう、海外で頑張って何かを成し遂げた、過去の市井の偉人たちに感謝の一言です。自分達、今を海外で生きている日本人にとって、何もしていなくても享受できるメリットだからです。
しかし反面、日本人の謙虚さ、真面目さが裏目に出る事もあり、コミュニケーション上
「何を考えているのか分からない。本音が見えない。ジョークを言ってもリアクションが無く、会話が空回りして続かない」
などと、深い所まで受け入れてもらえない面もあります。
この章では、ビジネスの場で冗談を言うなどは不謹慎だと思いがちである日本人が海外で働く際、ユーモアという武器をどのように使いこなしていくかを見据えましょう。
まずはどこまでがユーモアセンスとして受け入れられ、これ以上はRude(失礼)になる、という線引きについて示唆してみたいと思います。
日本の社会人とユーモア
海外暮らし20年以上の経験を持ってして断言できますが、日本人の真面目さと勤勉さは世界で群を抜いています(実は、匹敵するのは韓国人なのですが、別な章に譲ります)。
もちろん、そうでない日本人がたくさんいる事も知っていますが、英語のネイティブスピーカー達と比較しても、真面目な人が多い割合は相当高いです。
そして、だからこその超人的な長時間労働や、劣悪な通勤環境への忍耐、厳格に守られる納期、社内規約やビジネスマナーへの忠誠心など、弥助の目から見ても、これらを毎日守りながら働くのは日本人以外には無理とさえ思ってしまいます。
そんな日本人がほとんどを占める日本のビジネス環境において、真面目さや勤勉さと同列にユーモアというものは意識、または評価されているでしょうか?
例えば会社の一営業担当として、何かのご縁で知り合った新規開拓先となるかもしれない企業を訪問するとします。
応接室で初めましてと先方に名刺を渡してから、失礼いたしますと頭を下げて帰りのエレベーターに乗り込むまでに、心を通わせて笑い合える様な会話を例として挙げられるでしょうか?
BtoCの例で言えば、「いらっしゃいませ」から「ありがとうございました」までのマニュアル対応部分はもちろん、その前後のマニュアル以外の部分でも、お互いに心を通わせて笑い合える様な会話を想像できるでしょうか?
日本での就労経験があればお分かりかと思いますが、そもそも働くという事に真面目さは求められても、ユーモアという要素は求められていないとさえ感じています。
英語圏の社会人とユーモア
では両者を比較する上で、いわゆる海外の労働環境ではどうでしょうか?
弥助が経験上身を置いてきた多文化環境を通した結論から申し上げると、BtoBでもBtoCでもユーモアがあってなんぼの世界です。
日本人の中でも特に真面目な社会人の感覚からしたら、不謹慎とさえ映るかもしれません。
ですがBtoBの例なら、今後長期的な関係を築いていこうとする相手であれば尚更、初めましてのミーティングの中で、「さぁ、じゃあ、あなた自身のパーソナリティや経験について話してくださいよ。」と求められる事は珍しくありません。
ここであなたが自己紹介がてら、自分自身の面白エピソードで会議メンバーの笑いを引き出せたら、もうそれだけでミーティングは大成功です。
日本の例と同様のBtoCの場面でも、そもそもオーダーするまでが長いです。”How are you?”に始まり、天気の話題を経て、共通の話題を見つけアハハ、オホホ、と数分会話を弾ませ、「By the way, オーダー何にする?」みたいな感じです。
この時、お店の人とお客さんはお互いを名前で呼び合う事が多いです。初めてのお客さんなら名前を名乗り合う所から会話が始まります。
そして、ここにこそ日本のユーモアとの違いを探るカギがあります。
日本と海外、ユーモアに対する違いが生じる決定的な理由とは?
結論から言うと、この一点につきます。
海外では、BtoBでもBtoCでも、人は完全に対等。
日本では、お客様は神様です、お金を払う方が偉い的な暗黙の了解が、人と人との間に生まれる自然なユーモアを締め出していると考えています。
「お金を払う自分が、何故相手を敬ったりエンターテインしなければならない?」
「お金を貰うからには、相手の機嫌を損ねないように、ツマラナイ冗談にも笑ってあげなきゃ」
こうした感覚がもし最近の日本にまだ根強くあるのなら、海外で働く事を想定しているあなたは知っておかなければなりません。こうした考えはもちろん海外にもありますが、全てでは無い事を。
ビジネスの場で、もちろんOKなユーモア
この前提をしっかり理解していれば、ビジネスの場でどこまでの冗談がユーモアで、逆にどこからがRudeになるのか?という疑問への答えは自動的に決まります。
ビジネスの場であっても家族や友人に接するように、一人の人間同士として相手をハッピーにさせたり、気持ちを明るくさせる冗談はユーモアで、相手の気持ちを不快にさせる冗談はRudeです。
何のことはない、ビジネスの場でも変わらず相手を敬い、自分を知ってもらいましょう。自然体でいつもの自分でいいのです。
受け入れられるというよりも、海外流の円滑なコミュニケーションに必要とされるユーモアの例を列挙してみましょう。
自分自身の面白失敗談
前述したように、初めましてに近いミーティングや、初めてのお店に行った時など、自分の自己紹介を求められる場面は多々あります。
その際に、自分の経験やスキルに関する失敗談を面白おかしく披露できれば、あなたの印象は高まり、只でさえアジア人の顔を見分け難いと言われていますが、あなただけは次にあった時にも、決して忘れられている事はないでしょう。
いくつか列挙するリストの中に紛れ込ませるオチのジョーク
ビジネス上、何かをリストにして紹介したり、写真を数枚添付する場合、そのトピックに関連する何かクスっと笑わせるジョークを最後に付けると、相手から速攻メールが返ってきます。”You made my day!”「今日一で笑ったわ!」」と。
特に本題が暗い話題だったりすると、最後にクスっと笑わせられると、ネガティブに引きずらずに済む、相手の感情を助ける心理学的効果もあるんですよ!
過去の有名なジョーク
海外のジョークは、割とストックされて共有されている面もあるので、中には誰もが知っている有名なジョークもあります。それらを、似たようなシチュエーションやトピックになった時に披露すると、一体感が生まれます。
スピーチ
「カメラさん寄って、寄って」と自分のジーンズのコインポケットから極細のipodを出したり、封筒から書類を出すようにMac Book Airを取り出すスティーブジョブス。
ES細胞という難しい専門的な内容を説明中、immortality(不死)をimmorality(ふしだら)とわざと間違えて聴衆を笑わせるノーベル賞受賞の山中伸弥教授。
ユーモアの大切さとその効果を熟知しているプロフェッショナルは、いかにしてユーモア溢れるスピーチを行うかに腐心しています。
相手へのリアクション
こちらが相手を笑わせるユーモアも大事ですが、相手がユーモアを発した際のこちらのリアクションも同様に大切ですね。
日本人は礼儀正しくあるべきという姿勢なので控えめに微笑んだりという感じになるかもしれませんが、それは相手からしたら望んでいるリアクションではありません。
できれば大袈裟と思われるかもという位で丁度いいです。両手を大きく広げて”Wha‐‐t!?”みたいな感じのリアクションは、相手の弁舌に勢い尽きますよ。
結論~Rudeなユーモアは逆効果~
逆にビジネスの場で、ここからはユーモアなどではなく只の失礼になるであろう冗談は以下の通りです。
- 相手側の人種に関わる冗談
- 相手側の宗教に関わる冗談
- その場にいない共通の知人を揶揄するような冗談
- 世界中のどこかで起きている災害などの冗談
- 過去の歴史観を揶揄するような冗談
- 誰かを妬む様な悪口の様な冗談
- 有名人、著名人を誹謗する冗談
- その人の家族や友人の悪意が混じったからかい
これらは、“Just kidding.”では済まない結果になりがちです。
人間として許されない失礼な冗談かどうかであって、ここはビジネスだろうがプライベートだろうが、関係ないですね。
ユーモアセンスをビジネスに積極的に取り入れる上で、効果的なアプローチと絶対避けるべきタブーがしっかりと分かっているあなたは、ビジネスの場を海外に移しても最強のはずです!
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