ビザの取得方法の現実と裏話① 【就労ビザから永住ビザへ】
”はじめに”に代えて、でお話した通り、日本で暮らす事に疲れてしまっている人が次に考える事は、「自分も海外で暮らしてみたい」ではないでしょうか?
では、そう思い立った時に、簡単にはいかない最大の障壁となるものは何でしょう?
それは間違いなくビザです。
単純にビザが無ければ、その国に滞在できません。
どの国の政府も、世界中から優秀な人材を集めて自国の産業生産性強化を図る一方、自国民の就職を優先して失業率を出来るだけ下げたいという思惑があります。
そんな繊細なバランスが、海外からの留学生や労働力へのビザの発給量にいつも多大な影響を与えています。
この章では、海外で暮らす為に必要となる就労ビザについて、どういう種類があって、どういう方法で取得可能で、どれ位難しいのかについての現実に裏話を交えます。
大卒向け就労ビザ→永住ビザ
既に述べた通り、どの国の政府も、自国の産業が常に世界の中で競争力を持ち続けていけるように、世界中から優秀な人材を集めようとするものです。
そこで、現地の大学を卒業した優秀な卒業生に自国で働いてもらう為、卒業後現地企業に就職し、何年か勤続すれば永住ビザに切り替えられるというインセンティブを与えるタイプのビザです。
現在、海外の大学に留学中の学生は、この方法で将来の永住ビザ取得を見越した就職活動を検討する事が可能です。
しかし、ここで難点なのは、とにかくハードルが高いという事です。
ただ優秀なだけの人材ならその国の市民権を持っている卒業生にもゴロゴロいるわけです。
海外の就職事情は日本の新卒主義とは異なり、キャリア・経験を重視される傾向が強いので、大学を出たばかりの若者は、最初の取っ掛かりとなる第一歩は、ただでさえ難しいものです。
なので、企業にどうしてもあなたでなくてはダメだと思わせる何かが無くてはなりません。
ビジネスビザ→永住ビザ
このタイプのビザは、企業がスポンサーとなってあなたを雇用する事でまず一旦ビジネスビザを取得できます。
その後数年その企業で働いたならあなたは永住ビザを申請できますよ、という流れです。(あくまで、日本人経営の現地企業が日本人を雇用する場合を想定します)
一見すると簡単な事のように聞こえますが、通常雇用する側の企業は、その国の雇用環境に悪影響を与えない配慮を求められるため、まずは現地の労働者を対象に雇用の募集を行ったかが問われます。
つまり、高い費用を払って求人サイトに登録し、一定期間採用活動をした証明が必要です。
そしてその上で、なぜあなたでなくてはダメなのかを証明しなければなりません。
更に税金徴収目的からも、現地の一定水準をかなり上回る賃金を支払う(その後税金を徴収する)負担も、企業は担わなければなりません。
何故、企業はそうまでしてあなたを雇用する動機があるのか、疑わしくないですか?普通にワーキングホリデービザで来ている日本人を雇う方が相当安上がりですし、様々な証明を行う費用と手間暇を考えたら割に合うでしょうか?
そこは、あなたの将来的に永住ビザを取りたいという願望に付け込んだ、裏があるんです。
実際に現地で見聞きしている話ですが、まず給料に関しては、国に証明する為に会計上一旦その高額な部類に入る賃金をあなたにレコードが残る形、つまり振り込みで支払います。
そしてその後、企業に対し裏でキャッシュで返金させているケースが多いそうです。
しっかりとした雇用条件を提供しなければなりませんので、企業側には社会保障や年金に相当する給料以外の補償も多々生じる訳ですが、表立っては全て処理した後で、これらの分についてもこっそり返金させていると聞きます。
そして何より、あなたは企業に、というかその仕事を仕切っているキーパーソンに個人的に気に入られなければなりません。
その為には、暗黙の了解の下、以下の様な現実に耐えなければなりません。
- 長時間労働にも文句を言わない
- 休みの希望などもちろん出さない
- 他スタッフの急なシフトの穴埋めを厭わない
- 人の嫌がる仕事をさせられても粛々とこなす
- キーパーソンの機嫌を損ねて途中で雇用を打ち切られない様に常に顔色を窺う
こうした我慢に我慢を重ねられた人だけが、数年後に念願の永住ビザに切り替えられるというカラクリです。
一言で言えば、何でも言う事を聞く都合のいい奴隷スタッフを、実際は低賃金で雇えるという裏技なのです。
なので、永住ビザが取れたスタッフは、さっさと辞めていきます。
奴隷解放です。それは、そうでしょうね…。
中には、本当に雇用関係がそのまま良好な人間関係の上に成り立ち、そういった裏技を使われる事無く、信頼されながら業務を任されつつ数年を経て永住ビザを取得し、そのままその企業で働き続ける人もいるのかもしれません。
でも不思議ですね、今まで会った事がありません。
企業の駐在
まず、この滞在の形態は待遇面において最も恵まれているケースであると言えます。
大方の場合、日本で働いていた分の給料はそのまま日本で支払われ続けながら、海外勤務している間は海外でも給料を受け取れるダブルペイになっている事が多いと聞きます。
もちろん、どちらかで受け取る分の給料については、満額ではなく何割かもしれませんが、それでも日本と海外それぞれで支払われる傾向が強いです。
そして、海外滞在中の現地の家賃も会社が負担します。
その上、車が必要であれば車の手配、家族が同行するとなれば家族の扶養手当、奥さんが暇しないように習い事をしたければその費用まで、会社が負担するケースがほとんどです。
なので駐在のケースでよく耳にするのは、日本への帰国が発令された時に、どうしても日本に帰るのが嫌だと、永住を考え出すパターンです。
それはそうですよね?恵まれた環境で、家賃もタダ、車も与えられ、満員電車で通勤する必要もなく、家族とゆっくり過ごせる時間を満喫できる環境を手放せませんよね?
大抵の場合は、現実面での折り合いがつかずに、大人しく帰国する道を選ぶ人がほとんどですが、日本の過酷な労働環境に戻ってしばらくは、現地に戻りたいなぁと思うらしいです。
そして、このケースでの最大の難関は、そもそも海外駐在をさせてもらえる大企業に就職できるかどうか、という根本的な問題があります。
自分の行きたい国に支社があるのか?、自分のやりたい仕事は何なのか?、などと根本的な企業分析及び自己分析が出来、一流と見做される学歴も得た上での話です。
結論~グローバル人材になってから~
行きたい国によっては、他にも様々な就労ビザ取得の方法があるでしょう。
ですが何より、自分自身がこれからの世界で必要とされるグローバル人材であるというのが大前提になるでしょう。
語学力は当然の事、確固たる実力を兼ね備えた人材になれなければ、そもそもどこの国の企業にも必要とされません。
ただ英語が話せるだけではなく、何の専門家なのか、どういうキャリアを積んできたのかをいつでもどこでもプレゼンできなければなりません。
完璧なカバーレター、分かり易く洗練されたレジュメ、簡潔に構成された自己分析シートなど、準備するものも膨大です。
これ程までに、就労ビザを取得する事は難しいという覚悟が必要です。
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