5,6年生の授業内容は「コミュニケーションを図る基礎の育成」を実現する手段
文部科学省は、小学校・中学校・高校という流れ全体の中で、英語で聞いたり読んだりして得た知識や経験を元に、子供達が英語で自分の考えや意見を伝えあうようになるという大きな目標を掲げ、
5,6年生は「コミュニケーションを図る基礎を育成する」ことを目標としています。
この目標を達成するための手段が、授業内容の積み重ねですね。
具体的な授業の内容は、保護者の方はもちろん、先生方も他の学校ではどうなんだろうと気になるでしょう。
この章では、実際の5,6年生の英語の授業内容を、さまざまな実際の例を用いながらより具体的に解説します。
子供たちが受ける授業の様子をイメージできるようになるはずです。
もし万が一、お子さんが既に英語が嫌いと言い始めている、または5年生以上になって成績がつくようになってとても低い評価に落ち込んで自信を無くしている傾向があれば…、
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目標と授業内容の関連性
「コミュニケーションを図る基礎を育成する」ことが5,6年生の目標でした。
その目標を具体的にすると、さらに以下の3つにブレークダウンできます。
- 「知識および技能」…英語で何を理解しているか、何ができるか
- 「思考力、判断力、表現力等」…理解していることをどう使うか、既にできる事をどう使うか
- 「主体的に学習に取り組む態度」…英語を学ぶ事で、他の国の文化にも慣れ親しみ、主体的に英語を使おうとする姿勢
つまり、英語の単語や表現に慣れ親しんで、練習することで実際に使えるようになり、それを自ら積極的に使っていくグローバルな人材を育てるということです。
小学校の英語授業導入の目的については、こちらでより詳しく解説しています。お時間があれば是非!
そして、その目標を達成するための具体的な領域として5,6年生では以下の5つが設定されています。
- 「聞くこと」
- 「読むこと」
- 「話すこと[やり取り]」
- 「話すこと[発表]」
- 「書くこと」
上の3つの具体的な目標に、これら5つの領域を結び付けて学んでいくことにより、どのように達成の可能性が上がるのかを、順に詳しく掘り下げます。
「知識及び技能」
5,6年生になっても大切なのは、やはり実際の自分の事として自分の意見を伝えあう【言語活動】と密接に結びつける事です。それを「読み・書き」も加わる事で、音声、文字にそれぞれカテゴライズしているだけです。
音声
まず音声については、以下の5つの内容でさらに細分化されています。
1.現代の標準的な発音
英語の派生は多様であるという点は認めつつ、小学校での勉強としては特定の地域の発音や訛りに偏らない、いわゆる標準的な発音を指導するという前提が見受けられました。
英語なのか米語なのかなど、さらに詳細な説明はされていませんので、例えば”can’t”が英語式に「カント」に近くなるのか、米語の「キャン(ト)」に近くなるかは、ALT次第になるのでしょうか?
また、日本語にはない発音の”th”や“v”などについてや、発音しない子音について、日本語にはない母音と子音についてなどは、標準的な英語に沿った発音のまま指導し、日本語のカタカナ発音にならないように注意するとあります。
至極もっともですが、英語が苦手な日本人の先生にはハードルが高そうです。
特に a,e,i,o,u などの母音字については,”a”は「ア」だけではなく「エイ」と発音されることもあるなど、日本語のローマ字表記の読み方と英語の文字の名称の読み方が異なることを常に意識することとされています。
2.語と語の連結による音の変化
聞くことの難易度を上げていると想定している、いわゆるリエゾンの重要性を認め、語と語が連結する事で生まれるリズムと発音に慣れる事が必要とされています。
実際にローマ字で書かれた単語を示しながらリエゾンの解説をするのは中学校で行うものとしているので、小学校では繰り返し触れさせることでリエゾンというものに慣れ親しめばよいという感じです。
例えば”an apple”を「アン アップル」という発音で慣れさせるのではなく、「アンナポ」というリエゾンが自然であり、英語のリズムで話している事を、現時点ではとりあえす感じられさえすれば良いという事ですね。
他の例も挙げておきます。
- “I have a pen.”… 「ハヴ ア ペン」ではなく、「ハヴァペン」
- “it is good.”… 「イット イズ グッド」ではなく、「イッティズ グッ」
- “Good morning.”… 「グッド モーニング」ではなく、「グッモーニン」
- “I like cats.”… 「アイ ライク キャッツ」ではなく、「アイ ライキャッツ」
- “Nice to meet you.”…「ナイス トゥ ミート ユー」ではなく、「ナイス トゥ ミーチュウ」
- “What would you like?”… 「ホワット ウドゥ ユー ライク?」ではなく、「ホワッ ウジュウ ライク?」
3.アクセント
英語独特のリズムに慣れさせるために、しっかりと強弱によるアクセントを付け、はじめから英語のリズムを気付かせて習得させる事が重要とされています。
まさに英語を学んでいる日本人にとっても、慣れるまでに最も高いハードルの一つですので、日本人の先生も簡単ではないかもしれませんね。
具体的には、単語や句の中で最も強く発音するところを丁寧に指導します。
- “apple”の”a”
- “thirteen”の”e”
- “favorite”の”a”
- “on Monday”の”Monday”にある”o”
- “for my birthday”の”i”
例外として以下の2つの例のような語句は、中学校で習いますので小学校の英語では意識しなくて大丈夫という事になっています。
- “record“のように名詞と動詞でアクセントの位置が違う単語
- “newspaper“などの長い単語で、1番強いのと2番目に強いのと複数ある単語
4.イントネーション
イントネーションの上げ下げに関しても、実際に書かれた文章を目にしながらに理解するのは中学生になってからですが、慣れ親しむという意味で、大きく分けると以下の3つの指導を求められています。
- 語尾を下げるイントネーション
・普通の肯定文 … ”I like soccer very much.”↓
・命令文 … ”Go straight.”↓
・5W1Hの疑問文 … ”Where do you wanto to go?”↓
- 語尾を上げるイントネーション
・答えがYes or Noの疑問文 … ”Are you a baseball player?”↑
・平叙文の疑問形 … ”Ken can play the guitar?”↑
- 上げて、上げて、最後だけ下げるイントネーション
・並列表現 … ”I like English↑, Japanese↑, and math.↓”
・orを使った疑問文 … ”Is this your book ↑or hers?↓”
5.文における基本的な区切
少し意味を解釈しづらいのですが、文の構成や意味のまとまりを捉えて区切ると、聴くことにも話すことにも理解し易くなるメリットがあるため、そこが分かるように指導するとあります。
しかし、上の4つと比べると具体性はなく、教える先生によって最も差が生じそうです。
文字および符号
文字および符号については、以下の2つです。
1.活字体の大文字、小文字
英語では”c”の名称は「シー」ですが、”cat”などのように”k”と発音される事があります。
しかし小学校段階では、文字の名称を聞いてその文字を認識できるよう指導すればよいとの事です。
大文字と小文字それぞれに、コミュニケーションの一環として文字を書くという目的意識を指導します。
つまりそれを読む相手がいる事を意識し、一文字ずつ区別して認識できるような丁寧さと、適度の速さで書きあげる事も指導します。
実は小学校3年生の国語科で日本語のローマ字表記が指導されています。
英語では日本語のローマ字表記に当てはまらない綴りがあるので、そうした単語については十分に慣れさせた後で書くようにするといった工夫が必要という指摘がありました。
筆記体については、中学生になってからという事で、小学校の外国語科では扱いません。
2.ピリオド、クエスチョンマーク、コンマなど
文章として書く時に必要な符号は指導されます。
ピリオドの直前にスペースは入れない、ピリオドの後にはスペースを空けて次の文を始めるなど。
小学校の外国語科においては短文を扱うこととするとあるので、コンマについては以下の2つのケースのみです。
- ”Hi, Ken.”など人の名前を呼びかける時や
- ”apple, orange, banana and grape.”など並列にする時
ボキャブラリー
また、ボキャブラリー、イディオム及び慣用表現については、以下の3つです。
1.ボキャブラリーは大体600~700語の習得を想定しているとのことです。
日常会話で用いられるであろう単語を中心に、挨拶や自分に関連する語、自分の意見を伝えるための基礎的な言い回しに必要な語を指導します。中学校に行ってからの学習の土台になる事も期待されています。
人によっては、こんなに多いの!?と驚かれるかもしれませんね。
文科省は、3~6年生の4年間で合計210単位時間を割いていることを考慮すれば、他国の英語学習と比較しても妥当であると判断しているそうです。
2.イディオム
“get up”や”look at”のように自分の事を伝えたり、質問を作るのに必要な言い回しがイディオムである場合、これを指導するという事です。
生徒が言いたい内容によって、教材には載っていないイディオムも指導する事を示唆されており、ここも先生の英語力に依存してしまうかもしれません。
3.慣用表現
例えば、コミュニケーションを図る上で日常的によく使われる、下のような慣用表現を身に付けさせるという事です。
- ”Excuse me.”
- ”I see.”
- ”I’m sorry.”
- ”Thank you.”
- ”You’re welcome.”
イディオムと同様に、生徒が言いたい表現が必要なら指導して欲しいというニュアンスがあるので、先生の英語力に依存するでしょう
文と文構造
次に文と文構造についてですが、あえて文型とは呼ばずに、小学校では文構造と呼ぶそうです。
要はS+V+O+Cなどのように主語や動詞と関連付けて学ぶのではなく、一番初めに「誰が」が来て、次に「何をする」を言うなど、日本語の構造とは異なる気付きを得るように指導する事が求められています。
これは、先生が真面目に文型というセオリーを教える事に拘泥しないように配慮した結果だそうです。
大切なポイントは、とにかく何度も反復して聞いたり話したりを通して、この英語の文構造に慣れ親しむという点です。文法と絡めた指導は中学生になってから行います。
ですので、例えば”I am good at playing tennis.”という表現も、小学校では特に動名詞について説明したりはしません。
また、文の中に主語と述語の関係が一つだけ含まれる単文のみを扱って、以下の形の文を指導するそうです。
・普通の平叙文と否定文
動詞に3単元の-sをつける文法は避けています。”can”を使用する事で回避します。
“She can play basketball very well.”
・肯定と否定の命令文
命令文は丁寧さに欠けた表現であるとして、使用する場面設定に配慮するとありますが、具体的には示されていません。
・疑問文
小学校で教える疑問文は以下の通りです。
- be動詞と”Can”、”Do”で始まる答えが”Yes”か”No”の疑問文
・”Do you like blue?”
・”Are you from Canada?”
・”Can you dance well?”
- 5W1Hの疑問文
・”When is your birthday?” “It is March 10th.”
・What time do you get up?” “I usually ge up at 6:00.”
小学校で教えない疑問文の例は以下の通りです。
- ”May”や”Will”などの助動詞
- ”Does”や”Did”で始まる疑問文
- ”Which”や”Whose”などの疑問視でで始まる疑問文
・代名詞
“I”、”You”、”He”、”She”のみ使用します。
特に代名詞の説明はせず、「彼=he」という理解のみで大丈夫とされています。
また、三人称を用いる事によって生じる「動詞に-sをつける」「疑問文と否定文は”does”を用いる」などの詳細についてはスルーする事になっています。
・過去形
“-ed”をつける過去形は出来るだけ使わないようにし、日常会話で使用頻度の高い”enjoyed”だけ推奨されています。
代わりに、明らかに違いが分かる”saw”、”went”、”ate”を中心に使います。あとは”was”と”were”ですね。
・文構造
文構造の詳細については、以下の3つに細分化されますが、いずれも日本語との違いを気付かせ、基本的な表現としてコミュニケーションを通して実際に繰り返し触れるように指導する事が重要とされています。
(i) 主語 + 動詞
主語+動詞だけであれば難しくありませんが、後ろに副詞句や前置詞句が加わると少し難しくなりますので、まずは主語と動詞を確実に理解する事を優先させます。
(ii) 主語 + be動詞 +(名詞、代名詞、形容詞)
”My name is Sakura.”、”This is me.”、”I am happy.”など
(iii) 主語 + 動詞 +(名詞、代名詞)
“I like apples very much.”、”I like it.”など
“You look nice in that jacket.”などのように動詞+形容詞は、小学校では扱いません。
また、子供達が動詞に”want”を使う時が多いと思われるので、その場合は「to 不定詞」の形を取りますが、特に文法的な理解を指導する必要はないようです。
コミュニケーション上、そう言うものとしてスルーしても大丈夫とされています。
「思考力,判断力,表現力等」
「具体的な課題などを設定し、コミュニケーションを行う目的や場面、状況に応じ、情報を整理しながら考えた上で意見を言う事を通して」以下の事項を身に付けられるよう指導します。
- 身近で簡単な事柄について、伝えようとする内容を整理した上で、簡単な語句や基本的な表現を用いて、自分の考えや気持ちなどを伝えあう
- 身近で簡単な事柄について、音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を推測しながら読んだり、語順を意識しながら書いたりする。
3,4年生と同様に、英語で伝えあうだけでなく、自分と相手の考えを比較したり、新しい知識を学んだりしながら、自分の考えを再構築することです。
柔軟に異なる意見にも耳を傾け、自分の意見に肉付けする作業が推奨されます。
若干、場面設定が難しい気はしますが、参考にする文章や絵、写真などと自分自身を結び付けて、あくまで自分に関する事として読み書きに生かさなければなりません。
また、相手に情報を伝える際に、正しい語順で話さないと意味が全然異なるケースもあると意識させることも重要です。
“Sakura pushed Taku.” <ー> ”Taku pushed Sakura.”
このように主語が入れ替わってしまうと、逆の意味になってしまうことなどです。
5つの領域毎の内容
では次に、それぞれの領域毎に具体的な授業内容を解説します。
「聞くこと」
・「自分のことや学校生活など,身近で簡単な事柄」について,簡単な語句や基本的な表現を聞いて,それらを表すイラストや写真などと結び付ける活動
子供達が想像し易いトピックを選び、それについて先生やALTがゆっくりとはっきりと話す英語を聞く練習をします。
そしてその内容に関連した絵や写真を使って、聞き取った内容と結び付けることにより、子供達は何を聞いているのか、それを理解できているかを自分自身で感じ取ることができます。
英語を聞き取れて理解できたという小さな成功体験を積み重ねる事により、英語に対する自信を深めることができます。
・日付や時刻,値段などを表す表現など,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,具体的な情報を聞き取る活動
日付や時刻,値段などの日常生活に関する身近な事柄を表す語句等は,中学
校以降の英語学習において何度も触れることになる汎用性の高いものなので、
音声で十分慣れ親しみ,聞いてその意味が分かるようにしておくことは大変重要なこととされています。
例えば自己紹介の場面で,友達の誕生日や好きな季節などを聞き取ったり,「話
すこと(やり取り)」に取り組む中で,話し手が先週の休日に行った場所や
そこで買った物の値段を聞き取ったりする活動も,とても意味があります。
桁の大きな数字についても、子供達の学習の進捗具合を見ながら、徐々に大きな数字も聞き取れるような練習も推奨されています。
・友達や家族,学校生活など,身近で簡単な事柄について,簡単な語句や基本的な表現で話される短い会話や説明を,イラストや写真などを参考にしながら聞いて,必要な情報を得る活動
より具体的に自分自身のことについて話す相手の会話を聞き取る練習です。
例えば、なりたい職業のイラストや、行きたい場所の写真、そこで食べたい食べ物のイラストをそれぞれ複数用意し、子供達が自分のなりたい職業を発表し合い、聞き手がイラストを選んでいくなどの手法がおススメとされています。
“Hi, I’m Kenji. I wanto be a pilot. I want to go to the U.S.A. I want to eat hamburger.”
聞き手の生徒が「パイロット」「アメリカ」「ハンバーガー」のイラストを選択するなど。
視覚資料をヒントに聞き取りを行うなど、内容を理解する支援を行いながら、一語一句を全部聞き取るのではなく、必要な情報さえ聞き取れればいいなど、あくまでできない事を減点するのではなく、自信を深めさせるようなアプローチが重要です。
「読むこと」
・活字体で書かれた文字を見て,どの文字であるかやその文字が大文字であるか小文字であるかを識別する活動
A,B や a,b という文字を見て,それらが,/ei/,/biː/ を表した文字である
と識別できるようにしましょうということですね。
例えば、自分の名前を言った後に、スペリングも言って相手に伝える練習なども可能です。
またはランダムにアルファベットを並べ、間違えずに読む練習などが基本です。
きっと上手な先生は、子供達に身近な看板や目に付く英語を興味を持って見るようになる動機付けを与えられると思います。
・日常生活に関する身近で簡単な事柄を内容とする掲示やパンフレットなどから,自分が必要とする情報を得る活動
掲示物や旅行会社などのパンフレットは、伝えたい情報を読み手に効果的に伝えようと、写真やイラストを多めに使い、短い文で分かりやすく示されているため、子供達がそこから英語の情報を探し出して読む練習の材料としては最適だとお勧めされています。
・音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を,絵本などの中から識別する活動
絵本を読み聞かせながら、まずは生徒に問いかけます。
“What color is this?”
”It’s red.”
“Tha’s right!, Then, where you can find the word red in this page?”
このようにまずは慣れ親しんだ英語の音で、「赤」について話している前提を作り、そのまま”red”と書かれている絵本の文字を探させて、音と綴りをつなげる練習ですね。
絵本はイラストと文字が簡潔にしっかりとリンクしますので、「読み方」を練習するのにも良い教材ですね。
「話すこと(やり取り)」
・初対面の人や知り合いと挨拶を交わしたり,相手に指示や依頼をして,それらに応じたり断ったりする活動
例えば,年度初めに学級の友達と行う自己紹介や,道案内,旅行、買い物やレストランで客と店員になりきって行う活動などに取り組むことを勧めています。
仮にレストランでの会話であれば,次のようなやり取りが考えられます。
“What would you like?”
“Iʼd like pizza.”
“OK. How about drinks?”
No, thank you.
ポイントは、丸暗記して言えばいいではなくて、生徒がそれぞれなり切って、「自分がお客さんならこう言いたい」という、自分の事としての発言であることです。
文科省が「英語を話せるようになる授業」として最も重要と考えている【言語活動】=自分の考えや意見を英語で言うことが、ここでも登場しています。
・日常生活に関する身近で簡単な事柄について,自分の考えや気持ちなどを伝えたり,簡単な質問をしたり質問に答えたりして伝え合う活動
食べ物についてのトピックは、日常にある中でもトップクラスに身近なものですね。
こうしたトピックについて、あくまで自分の意見や考えを言い合う練習です。
”I like sushi very much. Itʼs delicious.”
“You like sushi. Me, too. Sushi is delicious. I like salmon. Do you like it?”
“Yes. I like tuna, too. How about you?”
ここでのポイントは、会話になっていることです。
相手の話に合わせた相槌、”Me, too.”という共感、「あなたは?」という質問を、暗記したまま言うのではなく、その時の自分の気持ちに従って言えるようにする練習であることが大切ですね。
・自分に関する簡単な質問に対してその場で答えたり,相手に関する簡単な質問をその場でしたりして,短い会話をする活動
ここで重要なのは、即興的なやり取りを英語で行わせる事です。
暗記とは最も遠いやり方ですね。
ただし、学習の段階にも依りますが、即興で言い合うのは難しいかもしれませんので、次のように限定することが重要です。
- 話題を「自分に関する」ことに
- 質問は「簡単な」ものに
- 会話は「短い」ものに
- “Do you ~?”“Are you ~?”“Can you ~?”“What ~ do you~?”など,児童が音声で十分慣れ親しんでいる疑問文を使う
子供達が上手く即興の受け答えができずに自信を無くさないよう、易しい環境を作り、支援を行いながら挑戦させるイメージです。例えば、
“What sports do you like?“
“I like baseball.“
“Do you like Ichiro(即興で野球選手の名前など)?“
“Yes, I do.”
こうした即興性のあるやり取りは、日本語で行う場合でも苦手な生徒は一定数はいることを考慮して、できなくても当たり前くらいのスタンスが先生には求められます。
「話すこと(発表)」
・時刻や日時,場所など,日常生活に関する身近で簡単な事柄を話す活動
日本語であっても、人前で何かを発言したり、発表することは生徒たちにとって簡単な事ではありません。
ですので、仮にうまくできなくても、できたところを褒めて伸ばしてあげましょうというスタンスが求められます。
しかし、語彙を増やす目的としても、他の活動よりもさまざまな語句を使って表現できる練習の場にもなり得ます。
発表に必要になる語句や表現は以下のものが挙げられます。
- 数字や月,曜日,場所を表す前置詞
- get,walk,do,brush,check などの動詞
- get up「起床する」,do my homework「宿題をする」,brush my teeth「歯を磨く」などのイディオム
- always,usually,sometimes などの頻度を表す副詞
これを踏まえて発表の例を挙げれば、このような感じが想定されます。
“On Sunday, I usually get up at seven. I always walk with my dog. I usually eat breakfast at eight.”
自分が実際に日常的に行っていることを思い浮かべながら,それらを表現するために使用させることで,より一層活用できるようになることも期待できます。
一度に限って指導するのではなく,視聴覚教材などを活用しながら聞かせることで意味を捉えやすくし、同じ動詞やイディオムを複数回の授業で繰り返し使用するなど,何度も聞いたり言ったりすることができるような指導を行うことが必要とされています。
・簡単な語句や基本的な表現を用いて,自分の趣味や得意なことなどを含めた自己紹介をする活動
自己紹介で使用することが想定される語句や英語表現としては,
- “My nameis ~.”
- “My birthday is ~.”
- “I like/have/play/watch ~.”
- “I can ~.”
- “Iʼm good at ~.”
- “I want to ~.”
などが考えられます。
学年が上がっても、クラスが持ち上がりでメンバーが一緒であれば、初めの自己紹介にも何かしらの工夫が必要かもしれませんが、基本的には今の自分が話したいことを十分話せる機会にすることが重要ですね、
・簡単な語句や基本的な表現を用いて,学校生活や地域に関することなど,身近で簡単な事柄について,自分の考えや気持ちなどを話す活動
例えば、「中学生になったら何をやりたいか?」など、自分にとって身近なトピックについて、それぞれ発表し合う場を作る練習です。
“Hello, everyone. I want to join the badminton club. I like badminton very much. I want to make many friends. Thank you.”
「話すこと[発表]」の活動では,話すための準備や練習をさせることが想定されているため,児童が自信をもって話す活動に取り組めるようにさせやすい面があります。
また,練習する時間を設けることを考えると,発音やイントネーションなどの音声に関する指導も行うことが望ましいとされています。
「書くこと」
・文字の読み方が発音されるのを聞いて,活字体の大文字,小文字を書く活動
基本となる文字の読み方と文字の書き方を一致させる練習です。
一見、簡単そうですが、実はこうした注意点があります。
- 「聞くこと」の活動により文字の読み方について十分慣れ親しませ,「読むこと」活動により文字を識別したり発音したりさせ,その後,「書き方」の活動に取り組ませるという順序性を踏まえる
- 活字体の大文字,小文字を一度に全て取り扱うのではなく,児童の進捗具合に応じて一度に取り扱う文字の数や種類に配慮する
- いわゆる「ドリル学習」のような,単調な繰り返しの学習に終始するのではなく,何らかの書く目的をもたせたり,ゲーム的要素を取り入れたりするなど,児童の学習意欲を高める工夫をする
- 「書くこと」の活動は教師が想像する以上に時間がかかる場合があるため、十分な授業時間を確保して,四線上に正しく書くことができるようにする
- 年間を通じて,全ての「書くこと」の活動において,文字を書くことができているか,できるようになってきているかを丁寧に見届け,指導に生かす
「書くこと」で意識したいのは、「書き写す」ことと「「書く」ことを明確に分ける事です。
「書き写す」には自分の意志は全く含まれていません。ただ参考にしながら文字を書くだけの作業です。
これに対して「書く」という行為は、”I like blue.”など、自分の事を考えながら書く行為のことです。やはり【言語活動】を意識して、機械的な作業にならないように注意が必要です。
まとめ
5,6年生の指導計画の作成に当たっては、3,4年生と中学校及び高校における指導との接続に留意しながら以下の事項に配慮するものとされています。
- 生徒たちが主体的で対話的な深い学びの実現を目指した授業改善を進める
- 2学年間を通じて外国語科の目標の実現を図る
- 3,4年生で習った語句や表現を使ってさらなる定着を目指す
- 繰り返し学習させて基本的な語句や表現を定着させるために、朝の時間、昼休み前後、放課後などを利用して10‐15分の短時間学習を実施する
- 言語活動で扱う題材は、児童の趣味・関心に合ったものとする。国語では日本語との違いに関心を持ち、音楽では言葉のリズムなどと絡めて、図工では完成した作品をShow and tellで紹介するなど、他の教科との連携も工夫する
- 障害のある児童には、学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指導内容や方法を組織的に工夫する
- 学級担任の教師または外国語を担当する教師が指導計画を作成し、授業を実施するに当たっては、ネイティブスピーカーや英語が堪能な地域人材などの協力を得るなど、指導体制の充実を図るとともに、指導方法の工夫を行う
これらを踏まえて、あくまで「子供達が英語でコミュニケーションを取れるようになり、将来はグローバルに活躍できる人材に育てる」ことを前提とした授業の内容であることが求められています。
文科省は、各単元ごとに全て授業計画を参考にできるよう公開しています。先生方は一人で指導計画を作成しようとせず、周りの先生と相談しながら取り組んで欲しいと思います。
保護者の方には、こうした目標と意図をもって、具体的にここまで解説してきたような内容の授業が行われているんだと理解してもらえたら幸いです。
きっと、お子さんの英語の教材をご覧になると腑に落ちると思いますよ!
教材に関して徹底的に解説した章はこちらです。もしお時間があれば是非!
(この教えないのになぜ動名詞を用いるかについては説明を見つけました。
日本の子供たちはよっぽど自信が無い限り”I can play soccer.”と気軽に言えないんだそうです。
そこで、「できる」ではなく「まぁ得意」というニュアンスが加われば言えるということで、”can”に代わる表現として”be good at -ing”を指導するのだそうです)