【言語活動】の神髄は、英語を使って互いの気持ちを伝えあうこと
小学校英語の指導要領の中に、目的として初めて【言語活動を通して行う】が盛り込まれました。
【言語活動】とは、
「実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝えあう活動」
「聞く・話す」を学ぶ3,4年生の外国語活動でも、「読む・書く」も含む5,6年生の外国語科においても、主旨と要点における最重要ポイントの一つであり、
【言語活動を通して授業を行う】ことが、授業のほとんどを占めなければならないという方針です。
これは各都道府県の小学校による英語の授業を説明する資料にも必ず取り上げられていますし、文科省の資料には何度も何度も登場してくる最重要ワードです。
平たく言えば、「コミュニケーションを取ることに重点を置く」ということですが、なぜ重要なのか?という出発点から深く掘り下げられており、小学校の英語授業に留まらず、中学校、高校まで同じ価値観・コンセプトが引き継がれようとしています。
この章では、小学校の英語教育の軸でもあり、最重要ワードである【言語活動】とは何を指すのか?
どんな活動が【言語活動】なのか、そうではないのか?を明らかにし、
具体的な内容についてまで説明します。
【言語活動】とは?
既に紹介した通り、【言語活動】とは
「実際に英語を使用して、互いの考えや気持ちを伝え合う活動」と定義されています。
小学校の英語授業において身に付けるべき目標とされている「知識・技能」と「思考・判断・表現」を学ぶことと並行し、むしろこれらを使って情報を整理しながら考えなどを形成し、それをお互いに伝え合うことに使用するという、全てが一体となった目標になります。
そして3,4年生の外国語活動では「聞くこと」、「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」の3領域ですが、5,6年生の外国語科においては「読むこと」「書くこ と」が加わった5 領域で言語活動が示されています。
子供達はその領域の勉強を行いながら英語の知識を増やしますが、その際に実施される以下のようなアクティビティは言語活動を行うために必要な語彙や表現を習う練習であり、言語活動そのものではありません。
- 単なるダイアログの暗記
- ゲームやチャントなど決まりに沿って行うもの
- ”Repeat after me.”のような反復練習
なぜなら、これらの練習には「自分の考えや意見」が全く入っていないからですね。
このようにトピックを自分自身の事として捉え、自分がどう思うか、どう考えるか、相手がどう思っているのかを意識しながら伝え合うという活動を徹底させるという狙いがあります。
なぜ小学校から英語を始めるのか?
それは英語を使ってコミュニケーションできるグローバルな人材を育成するためという、大きな目標に還るということです。
【言語活動】を意味のあるものにするためには?
そこで、確実にその趣旨に沿って小学校での英語の授業を行うためには、以下の条件を整えることが必須となります。
- コミュニケーションを行う目的,場面,状況などを明確に設定する
- 簡単な語句や基本的な表現を用いながら,友達との関わりを大切にした具体的な課題等を設定する
- 児童が進んでコミュニケーションを図りたいと思うような,興味・関心のある題材や活動を扱う
- 国語科や音楽科,図画工作科など,他教科等で児童が学習したことを活用したり,学校行事で扱う内容と関連付けたりする
- 伝え合う目的や必然性のある場面でのコミュニケーションを大切にする
- 活動形態についてもペアやグループ,学級全体に向けた発表などを導入する
- ALTなども交え、指導者から児童,児童から指導者,また児童同士など,多様な形態で活動する
- 児童が,自己理解・他者理解を深め,コミュニケーションの楽しさを実感できるように行う
このように、児童にとって身近で具体的な場面設定の中で行い,「誰に」,「何のために」という,「相手意識」や「目的意識」をもって,質問したり答えたりする必然性のある活動であることが分かりますね。
言葉を身に着けるのは時間が掛かることだし、間違えながら言葉を正しく使えるようになるには、実はここで英語力は高くないかもしれませんが、担任の先生の力が重要なのです。
子供達の興味や関心はどこにあるのか?学校行事や他の教科との連携についてどうなっているのか?子供同士どのようにペアを組ませればよいか?など、一番詳しいのは誰でしょう?
そうです、先生方ですね。
そして学級づくりをするのも先生の役目です。英語に関しては特にですが、もし間違えても笑われない環境をクラスの中に築くことができれば、子供達はより自分の考えや意見を言いやすくなります。
その結果、子供達にどういう効果を与えられるか?
- 自己肯定感を持てる
- 共感的な人間関係の下、あなたはどうなの?の応酬が期待できる
- 自己決定の場があり、自己の可能性を拓ける
- 英語のコミュニケーションの楽しさを経験し,言語を用いてコミュニケーションを図ることの大切さに気付かせ,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成できる
言語活動には難しいトピックや単語を使う必要はありません。例えばこのフレーズを繰り返し練習するとします。
“I like apples.”
そして子供は自分がリンゴを好きかを考え、自分の意見として”Yes”, “No”を言うことができます。
その会話はまだまだ発展するかもしれません。
“I like peaches. How about you?”
“I like peaches, too.”
このように単語も文法も難しくはないことでも、自分の意見や考えを話しているから立派な【言語活動】です。
自分の事だからこそ身につくということです。
外国語科の具体的【言語活動】例
では、最後にどのように【言語活動】が授業の中で実践されているか?一つの具体例を紹介します。
広島県の小学校5年生の授業からの例ですが、
“What ~ do you like?”と“I like~.”の表現を使って,好きなものについて積極的に尋ねたり答えられるようにする単元においてです。
英語でのあいさつを交わしたら、まずは今日の目標を全員で確認します。
友だちに何が好きかをインタビューして,好きなものを伝え合うことができる。
その後、チャントやゲームなどで、英語表現に気持ちと口を馴染ませます。
そしてメインアクティビティであるインタビューを開始します。
クラスを歩き回って相手を探し、以下のような会話を次々に相手を変えて交わしていきます。
“Hello.”
“Hello.”
“What fruits do you like?”
“I like grape.What color do you like?”
“I like blue.”
“Me, too. Thank you.”
“Thank you, too. Bye.”
もちろんまだまだ自然な会話とは言い難いですが、ポイントは会話をいちいち挨拶から始めるところや、聞き終わったら”Bye”と言って別れるところ、相槌を打つ事も、”Me, too.”と共感の意思を示す事も、全て自分の考えや感覚で自発的に言っていることが重要です。
教師は、例えば生徒が言いたい事を英語で何と言えばいいか分からない場合などを積極的にクラスを周ってサポートします。
あくまでも決まったダイアログを暗記して言っているのではなく、
- 自分で「言いたい!」と思い、
- それを「伝えたい!」と積極的に発信し、
- 聞き手が分かりやすい様にゆっくりとはっきり話す姿勢を心掛ける
このようにコミュニケーションの相手である聞き手のことも意識しながら、自分の考えや意見を言えるようになるという【言語活動】の真意に沿った授業が期待されています。
まとめ
今までの学校の勉強と言えば、やはり受験を視野に入れた暗記が中心の勉強で、小学校でもそうした傾向は強かったかもしれません。
しかし、この小学校での英語授業開始を期に、より一層英語でコミュニケーションが取れる世界で通用する人材を育成しようという方向に舵がきられた気がします。
その最たる根拠となるものがこの【言語活動を通して】学習するという方針です。
ただ単に暗記ができてテストの点数が高ければいいという教育は、英語を話せる多くの日本人を生まないまま、ここまで来てしまいました。
文科省がその結果を真摯に受け止め、ここで本当に自分の考えを英語で話せる人材を育成しようという本気が見えたので、この流れが今後より太くなり、多くの日本人が英語を苦にせず、世界中で活躍できるようになってほしいと思います。
その実践編の一つとして、英語圏のコミュニケーションに子供たちが慣れることができる一つの例をまとめました。
友達を別の友達に紹介するやり方です!もしお時間があれば是非!