【小学校英語の評価・成績】ペーパーテストで評価はしない!

3. 小学校の英語授業を徹底解説!
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小学校の英語の授業における評価の意義は、単なる成績づけではない

文部科学省が小学校での英語授業導入を決めた目的は、

【英語を介して自分の考えや意見を伝えあえる双方向のコミュニケーションを図れるグローバルな人材をを育成する】

ことにありました。

一般的に学校での科目に対する評価は、間違った答えをバツにして生徒間の点数に差をつけるような減点法という側面が強いイメージでしたが、そのやり方では新しい目標に達する事は不可能ですね。

学習指導要領改訂の趣旨を実現するためには,学習評価を真に意味のあるものとし,指導と評価の一体化を実現することがますます求められているとあります。

そこで学習評価の改善の意義というか、基本的な方向性が以下の3つとして示されました。

  1. 児童生徒の学習改善につながるものにしていくこと
          
  2. 教師の指導改善につながるものにしていくこと
         
  3. これまで慣行として行われてきたことでも,必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと

保護者の中には、評価とは成績をつけることと同義と思っている人もいるかもしれませんが、実はここに誤解があります。

評価とはこの3つに含まれる通り、

子供達が学んでいる過程を把握してより改善するため、教師が単元計画や指導方法を見直し改善するために行われるもの】です。

この章では、保護者が気になっているであろう小学校の英語授業の評価について、文科省の紙資料を動画資料で補足しながら、とにかく分かりやすく噛み砕いてまとめます。

お子さんが成績表を持って帰宅した際、ここで得た評価の意義と目的という知識を実際の英語評価と比べ、お子さんにはこういう所が足りなかったのかな?と判断する一助になれば幸いです。

小学校の英語授業における「評価の意義」

文部科学省は、成績はつかない3,4年生の外国語活動と、教科として成績がついて記録される5,6年生の外国語科のいずれもにおいて、評価自体にフォーカスしないよう先生方に注意を促しています

その根拠は、

【学習目標と学習評価と指導は全てつながっているものであり、評価のための評価ではない】

という事です。

より顕著で分かりやすいので例に挙げますが、

【文科省は外国語科の評価を1単元8時間のまとまりの中で行うよう先生方に指導】しています。

後述しますが、評価を行う際は「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「自主的に学習に取り組む態度」という3つの軸についてそれぞれ8時間の単元計画を立てますが、毎時間評価するわけではありません

8時間の中の5時間目時点で評価がCになりそうな子供を、単元終了時にCにせずに済むよう指導することこそが重要

という意味です。

残りの6,7,8時間で改善を積み重ねた結果、8時間目でBなのかCなのかの記録に残る評価を初めて行うというイメージです。

単元の目標の実現状況を判断するよりどころを表現したものが評価基準であり、各生徒の進捗具合をしっかり把握しつつ1~7時間でしっかりと指導するなど、毎単元が評価対象ではないという事ですね。

また「主体的に学習に取り組む態度」は、評価するのに時間が掛かるという理解の下、2単元にまたがって評価しても良いという事も一つの方法として推奨しています。

これらはあくまで一つの例で、最後は各学校の指導方針、成績の付け方の方針に依存しますが、この基本的な「評価の意義」については、文科省の資料や参照動画の中で繰り返し述べられています。

成績の付き方

5,6年生の外国語科は記録に残る成績がつきますが、前項で述べた通り、まとまりごとの評価を推奨されています。

各単元ごとに設定された目標に達するよう、8時間の中で生徒の学習面も教師の指導面も改善を積み重ね、最終的に総合評価となって記録に残る成績となります。

成績は3段階です。

  • 「十分満足できる」状況と判断されるもの:A
          
  • 「おおむね満足できる」状況と判断されるもの:B
         
  • 「努力を要する」状況と判断されるもの:C

評価によって子供が英語嫌いにならない?

実は小学校での英語教育を開始する事について構想が持ち上がった2010年辺りに行った教師へのアンケートでは、反対が過半数以上を占めました。

中でも最も懸念された理由は、悪い成績をつけられた生徒が中学校に入るよりも前倒しで「英語が嫌いになる」のではないか?という懸念です。

2018年に、文科省が全国の国公立の中学3年生6万人を対象に行った調査では、英語が好きな生徒は54.6%だったそうです。

残りの45.4%のうち、英語が嫌いな理由は以下の2つでした。

  • 英語そのものが嫌い(34.0%)
         
  • テストでいい点が取れない(15.0%)

【苦手意識を持つ→苦手だからつまらない→つまらないから勉強したくない→成績がよくない→嫌い】

こうした一連の心理が働く事は簡単に想像できますし、実際それが原因で英語を嫌いになっている中学3年生が15%もいる事は見過ごせないかもしれません。

小学校でもテストの点数だけで評価しようとしてしまうと、同じ結果を招く懸念は確かにありそうです。

また、「英語が話せない先生に評価できるのか?」という疑問が湧くのも正直なところでしょう。

(小学校の先生の英語の実力について明らかにしている章があります。お時間があれば是非!)

しかし、この部分については、文科省から教師向けにとても詳細な評価方法についての指導がありますし、資料もたくさんあります。もちろん、先生方も一生懸命誠実に評価してくれようとしているでしょう。

次からの項目で、英語の授業において何をどのように評価しているかを具体的に知れば、評価に対する信頼性は高まると思われます。

何を評価するのか?

まず外国語活動・外国語科の両方とも、評価する軸は同じ3つです。

  • 「知識・技能」
    何を理解しているか」、「何ができるか」を体験的に身に付けていく
    という事
         
  • 「思考・判断・表現」
    理解していることをどう使うか」、「既にできることをどう使うか
    を育成するという目標
          
  • 「自主的に学習に取り組む態度」
    どのように社会や世界と関わり、よりよい人生を送るか

この3つの柱に関しては、【小学校の英語授業の目標】の章で詳しく解説しています。興味がある方は是非!

この3つそれぞれに、外国語活動では3つ、外国語科では5つの領域の中からいくつかの領域が加えられて評価する目標が決められています。

仮に5つの領域全部を評価する場合、外国語科の例でイメージすると以下の表のようになるわけですが、次の項で実際の具体例を使って詳しく説明します。


「知識・技能」
「思考・判断・表現」「自主的に学習に取り組む態度」
聞くこと
話すこと(やり取り)
話すこと(発表)
読むこと
書くこと

どのように評価しているかの具体例

一つの単元を例に、具体的にどのような流れと方法で評価する事を推奨されているかを解説します。

参照元は、文部科学省 国立教育政策研究所が発行している「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料からの一部抜粋です。

例として参照するのは、5年生の教材「We Can! 1」のUnit 2「When is your birthday?」です。

単元目標について

単元目標は以下の2つです。

  • 自分の事も相手の事もお互いに知り合うため、誕生日や欲しいプレゼントなど、聞きとったり、伝えあうことができる。
         
  • アルファベットの大文字を書くことができる。

この目標を評価の3つの柱と、この単元で評価対象になる「聞くこと」と「話すこと(やり取り)」と組み合わせて落とし込んだ評価目標は次の表になります。

知識・技能思考・判断・表現主体的に学習に取り組む態度



<知識>
月日の言い方や,I like/want
~ .
Do you like/want ~ ?
What do you like/want?
When is your birthday?
, その答え方について理解している。
<技能>
誕生日や好きなもの,欲しいものなど, 具体的な情報を聞き取る技能を身に付けている。
相手のことをよく知るために,誕生日や好きなもの,欲しいものなど,具体的な情報を聞き取っている。
相手のことをよく知るために,誕生日や好きなもの,欲しいものなど,具体的な情報を聞き取ろうとしている。









<知識>
月日の言い方や,I like/want
~ . Do you like/want ~ ?
What do you like/want?
When is your birthday?

その答え方について理解している。
<技能>
誕生日や好きなもの,欲しいものなどについて,
I like/want
~ . Do you like/want ~ ?
What do you like/want ~ ?
When is your birthday?
等を用いて,考えや気持ちなどを伝え合う技能を身に付けている。
自分のことをよく知ってもらったり相手のことをよく知ったりするために,自分や相手の誕生日や好きなもの,欲しいものなどについて,お互いの考えや気持ちなどを伝え合っている。自分のことをよく知ってもらったり相手のことをよく知ったりするために,自分や相手の誕生日や好きなもの,欲しいものなどについて,お互いの考えや気持ちなどを伝え合おうとしている。

「書くこと」が評価対象から外れた理由

単元目標には「書くこと」も含まれていますが、この表には含まれていません。

文科省が説明するその理由は、まだ5年生の2つ目のUnitという時期に「書くこと」を評価し、記録に残す成績とするのはかわいそうだし、まだ早いという判断があるからだそうです。

しかし最終的に評価基準を決めるのは各学校次第です。

ある学校は学力に先進的であるべく「書くこと」も評価に入れるという判断であってもよく、それが学校のカラーにつながります。

文科省は評価から外す事を推奨していますが、あくまでも学校次第です。

評価のポイント

上の表から読み取れる3つの柱で「聞くこと」と「話すこと(やり取り)」を評価する方針を解説します。

「知識・技能」

表の中では、このトピックで具体的に何を理解して何ができるかを評価すると言っています。

このトピックで生徒に提示される以下の語彙や表現は【言語材料】と呼ばれています。

  • When is your birthday?
       
  • My birthday is ~.
       
  • What ~ do you like? I like/I don’t like~.
       
  • Do you like ~? Yes, I do./ No, I don’t.
        
  • What do you want for your birthday? I want ~
        
  • Do you want ~?
        
  • This is for you. Thank you. You’re welcome.
        
  • Happy Birthday.
         
  • 各月の名前、季節、序数(1st – 31st)
         
  • 日本の行事(New Year’s day/eve. Children’s day. Doll’s festival)

外国語科の目標の中に「外国語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなど」とありますが、これが正に【言語材料】のことを言い表しています。

そして中学校での目標に出てくる「文法」ではなく、この時点では「文構造」に留めている所も評価のポイントです。

What animal do you like?

この問いに対する子供の回答が仮に

I like dog.

だった時、正しい文法は“I like dogs.”ですが、あえて正解とします

先生は正しい文法で指導はします。正しい文法で“I like dogs, too.”と言い換えて、単数形では間違っていることは指摘する。だけど評価はしません。

また音声についても、目標にも指導要領にも英語の発音やイントネーションで聞ける・話せるようにできると記載がありますが、指導はするけれどもこの時点ではまだ評価の対象にはしません。

こうした配慮の上で、これら知識としての【言語材料】を理解していることが大切であり、このような【言語材料】を正しく備えているかどうかが評価の対象です。

「思考・判断・表現」

基本的には「聞くこと」の評価は

【相手のことを良く知るために具体的な知識の情報を聞き取っている】

であり、「話すこと(やり取り)」の評価は

【自分のことをよく知ってもらったり、相手の事もよく知るために、知識の情報に関することについてお互いの気持ちや考えを伝えあっている】です。

ただし、大切な評価のポイントは、

【そもそも生徒が思考・判断・表現をしているか?】

という事です。

例えば、一連の会話を先生が黒板や模造紙に書いて、所々を空欄にして生徒に穴埋めさせるように準備します。

ここで、生徒はペアになってその会話(ダイアログ)を言い合う練習をしますが、ほぼ全員がそのダイアログ通りに話をすすめます

巡回英語指導員が先生に

「生徒が思考したポイントはどこでしたか?」

と尋ねると、先生は

「空欄を埋めようとしたところです。」

と答えます。

しかし、これは思考ではないという判断になります。

ダイアログを黒板に貼ってしまうと、生徒はそれを【言語活動の中で】も読むだけ。穴埋めを考えるだけ。それは思考ではないという判断です。

そうではなく、例えば「ALTにこの学校の素敵なところを伝えよう!」と場面設定をすると、子供は何を言いたいかを思考します。

そこが出来ているかを評価しようということです。

この下の2点が評価のポイントです。

  • 【目的や場面に適切な表現を用いているか?】
        
  • 【言語材料をうまく使えているか?】

自主的に学習に取り組む態度

ここで最も大切な評価のポイントはこの2点です。

  • 【相手への配慮が重要】
         
  • 【相手が分かりやすいように話せているか?聞き取ろうとしてあげているか?】

知識・技能、思考を身に付ける事に向けて、【粘り強い取り組みを行おうとしている側面】と粘り強い取り組みを行う中で、【自らの学習を調整しようとする側面】をしっかりと見てあげるような指導が期待されています。

そしてこの部分の評価は、とても時間が掛かる事を前提として評価を行うとして、評価する時期にも配慮するよう文科省は推奨しています。

先生には、そういう生徒の姿を引き出してあげる指導が求められるという事です。

まとめ

この章では、小学校英語の授業でどのようなポイントで、どのように評価をしているかについてまとめました。

  • 評価の意義は、学習目標と学習評価と指導は全てつながっているものであり、評価のための評価ではない
         
  • 成績の付き方は3段階で、単元ごとのまとまりの中で評価され、生徒の理解と活動の改善を重ねながら総合的に評価する
         
  • 評価への懸念は、苦手意識を持つ→苦手だからつまらない→つまらないから勉強したくない→成績がよくない→嫌いという流れを作ってしまうのではないか?という事
          
  • また、英語ができない先生に適切な評価ができるのか?という懸念には、生徒の個性を最も知っている担任が行うのが最も適切という結論
          
  • 子供達の習得する時期や難易度などを考慮し、その時点で時期尚早と判断される事柄については、指導はするけど評価はしない
         
  • 3つの柱について評価するポイントは、生徒の自主性に着目すること

文科省が推奨している通り、評価というものは成績をつけることが目的ではなく、子どもの得意・不得意を把握しながら「もっとがんばろう」とモチベーションを上げられるものであり、教師にとっても授業を改善するためのヘルプになるものであるべきという事を忘れてはならないでしょう。

単に悪い成績を取った生徒が、前倒しに英語を嫌いにならないで済む様な配慮が必要とされています。

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