学年ごとの教育目標について知っていますか?
2020年から小学校での英語教育が始まりました。
- 3,4年生の外国語活動
- 5,6年生の外国語科
外国語活動はまだ科目ではなく成績はつきませんが、外国語科は国語や算数と同じ様に科目として扱われ、3段階ではありますが成績がつけられるようになりました。
しかし、そもそもどうして小学校での英語の授業が開始されたのでしょうか?
その目標はどこにあるのか?について詳しく知っている人は、意外と少ないかもしれません。
小学校の英語授業化の流れについて、文部科学省が最も強調したい事の一つは
【中学校の勉強の前倒しではない】
という事です。
文科省は声を大にして「違う!」と言い切っています。
その理由は、これまでの試験対策中心だった中学校の英語とは異なり、
【小学校の英語はテストの点数を上げるための勉強ではなく、英語で自分の考えを話せるコミュニケーション力を育む教育】
だからです。
なぜ小学校から英語を学ぶのか?については、中学校の勉強の前倒しではない事を理解する事で、その理由が腑に落ちるのではないかと思います。
この章では、とにかく難しい表現の文科省の資料中、【小学校の英語教育の目標】について分かりやすい言葉に直して徹底解説します。
小学校の英語学習と中学校の英語学習は、つながっているけど別な物
文部科学省の資料から要約すると、外国語活動、小学校の外国語科、中学校の外国語科の目標はそれぞれ以下のように比較する事ができます。
【3,4年生の外国語活動の目標】
外国語によるコミュニケーションにおける見方と考え方を働かせ、外国語による聞くこと、話すことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を育成する事を目指す。
【5,6年生の外国語科の目標】
3,4年生で培った内容に読むこと、書く事が加わり、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を育成する事を目指す。
【中学校の外国語科の目標】
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,聞くこと,読むこと、話すこと,書くことの言語活動を通して,簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合った りするコミュニケーションを図る資質・能力を育成することを目指す。
このように、それぞれが英語でコミュニケーションを図るという共通の目標の下でつながっているのが分かります。
そのための「素地」と「基礎」を小学校で育み、文法や文型といったより高度な内容を学ぶ中学校の勉強に活かしていくという流れですね。
ですから、中学校で勉強する内容を小学校に前倒ししてやるのではなく、中学で学ぶ内容をより簡単に理解できる基礎を固めるという方針です。
強いて言えば、ボキャブラリーは小学校卒業時点で500以上は既に習うので、その意味では前倒しかもしれませんが。
外国語活動の目標
外国語活動としての目標
3,4年生では英語でコミュニケーションを図る素地を育成する事が目標とされていますが、具体的にブレークダウンすると次の3つの柱で説明できます。
- 「知識及び技能」
- 「思考力,判断力,表現力等」
- 「外国語への慣れ親しみ」
【知識及び技能】
まずは「知識及び技能」ですが、要約するとこうなります。
【外国語を通して,言語や文化について体験的に理解を深め,日本語と外国語との音声の違い等に気付くとともに,外国語の音声や基本的な表現に 慣れ親しむようにする】
つまり「何を理解しているか」、「何ができるか」を体験的に身に付けていくという事です。
これまでの授業の導入準備期間中、音声中心で学んだ内容が、中学校に進学してからの文字への学習に円滑に接続されないという課題が明らかになりました。
そこで、より「日本語と英語との音声の違い」に気付ける活動を行い、5,6年生への文字につながる素地を育むことが重視されています。
また、子供達の3,4年生の時の柔軟な適応力を生かし、机の勉強ではなく体験型の活動を通して「国際感覚の素地」を養い、英語への興味や関心を高めることを目指しています。
【思考力、判断力、表現力等】
次に、「思考力,判断力,表現力等」の要約です。
【身近で簡単な事柄について,外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを伝え合う力の素地を養う】
これは、「理解していることをどう使うか」、「既にできることをどう使うか」を育成するという目標です。
子供達がよく知っている学校の友達、先生、家族など常日頃コミュニケーションを取っている相手や、自分の手に届く距離にある物、または日常生活の中で起きる出来事などについて、自分の言葉として英語で話したり、聞いて理解する体験を積み重ねるという事です。
【主体的に学習に取り組む態度】
最後に、「主体的に学習に取り組む態度」ですが、要約すると以下の通りです。
【外国語を通して,言語やその背景にある文化に対する理解を深め,相手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う】
「どのように社会や世界と関わり、よりよい人生を送るか」と言い換えられるそうです。
英語のコミュニケーションを図る素地となる資質・能力を身に付ける上で、「学びに向かう力と人間性」は不可欠な要素であるとされています。
つまりは、「知識及び技能」と「思考力, 判断力,表現力等」を育むための土台となる要素という事ですね。
英語に慣れ親しむだけでなく、常に相手に分かりやすく伝えるよう意識しながら聞くことや話すことに自信を持ち、より積極的に取り組めるようなメンタルを作ろうという事です。
英語としての目標
上記、外国語活動としての目標とリンクさせながら、言語としての英語の目標は、3,4年生では以下の3つが対象になります。
- 聞くこと
- 話すこと[やり取り]
- 話すこと[発表]
文科省の資料に何度も何度も言及されている小学校の英語授業の最重要ポイントである【言語活動を通して】を実践し、英語で聞いたり読んだりして得た知識や情報、アイデアを活用して、自分の考えとして伝えあう事を目標としています。
まだ成績がつかないことから、設定される目標には「できる」という言葉は用いず、「~する」に留まっているところが5,6年生の目標との違いです。
【聞くこと】
まずは「聞くこと」ですが、以下の3つの目標から成ります。
①【ゆっくりはっきりと話された際に,自分のことや身の回りの物を表す簡単な語句を聞き取るようにする】
とにかくまずは、実際に馴染みのある物事に関する表現や語句を聞き取りましょうという事ですね。
3,4年生の外国語活動は【生徒が英語に初めて触れる】という前提です。ただでさえ初めての経験に戸惑ったり、しり込みする事が想定されます。
ハードルを下げて英語への興味や関心を強くする = 自分に関係している事を話題にする
自分が知っている事柄だから聞き取りやすい、聞き取れたから今度は使ってみようという利点もあります。
何を言っているか分からないから授業についていけないという状態を作らないよう、「自分の事」という能動的に関われるトピックの選択が重要ですね。
②【ゆっくりはっきりと話された際に,身近で簡単な事柄に関する基本的な表現の意味が分かるようにする】
次にこの目標は、①で聞き取った内容の意味を理解して自分のものにするという事です。語句だけでなく、定番の英語表現にまで聞き取りの範囲が広がっています。
聞き取れただけでなく意味もちゃんと理解ができれば、それが自信に変わって話すことにもつながっていきますね。
③【文字の読み方が発音されるのを聞いた際に,どの文字であるかが分かるようにする】
もう一つの「聞くこと」の目標は、文字の読み方の発音を聞いて、それが表す文字が分かるようにする事です。
大文字と小文字は3,4年生で習いますので、どの文字がどの音なのかという基本的な結びつきを理解する事を目標とします。
英語の文字には,名称以外に,語の中で用いられる場合の文字が示す音があり、
“a” という文字は,/ei/ という名称があると同時に,
語 の中では /æ/(例:bag,apple)や /ei/(例:station,brave)という音も持っています。
“c“という文字は、/siː/という名称があると同時に、
語の中では/s/(例:circle, city)や /k/(例:cap,music)という音も持っています。
しかし、この時点では文字の読み方を聞いて、その文字と結び付けられればよしとされています。
例えば「リンゴはapple」であるのと同様に「Kは/kei/」、「Aは/ei/」という具合ですね。
ただの暗記にならないように、【言語活動を通して】かつ【身の回りの事柄と絡めて】楽しく覚えられるようにするべきでしょう。
言語活動については、より詳しく解説した章があるのでお時間があれば是非!
【話すこと(やり取り)】
次に、「話すこと」ですが、これは会話の「やり取り」と、皆の前でスピーチを行う「発表」に分かれています。
まずは「話すこと(やり取り)」ですが、やはり3つの目標で構成されます。
①【基本的な表現を用いて挨拶,感謝,簡単な指示をしたり,それらに応じたりする】
この目標では、英語に初めて触れる事を前提とし、生徒が安心して楽しくコミュニケーションが図れるよう、暗記に基づく機械的なやり取りにならないような注意が必要です。
挨拶もお礼も、指示のやり取りも、自分達に身近に関係のある内容で行い、他人事ではない、自分の事として積極的に取り組める工夫が望まれます。
②【自分のことや身の回りの物について,動作を交えながら,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うようにする】
①で行った定型的な基本の表現を踏まえ、今度は自分の考えや気持ちを盛り込んだ内容を話せるようにしましょうという事です。
自分の考えや思いをより伝えるために、手で数字を作ったり、大きさを表現したりと動作を交えながら話すことも覚えます。
また表情からも楽しい話をしているのか、悲しかった何かについて話しているのかが伝わるので、積極的に表情豊かに話すことも推奨されています。
③【サポートを受けて,自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いて質問をしたり質問に答えたりするようにする】
もう一つは、①と②を踏まえた上で「話すこと」をさらに進化させ、「質問をすること」と「その質問に答えること」という双方向性を加えましょうという事です。
この辺りでは、実際に質問をしたりされたりする事で、上手な受け答えができない生徒が出てくる事も想定されます。
そこで、できる限り身の回りのの事柄に絞ることはもちろん、教師やALTのその場でのサポートを受けながら「質問できた」や「質問に答えられた」という成功体験を積み重ねる事で、質問を介したコミュニケーションに慣れさせる事が重要です。
【話すこと(発表)】
もう一つの「話すこと」は、スピーチなど皆の前で行う発表です。この「話すこと(発表)」の目標も3つから構成されます。
①【身の回りの物について,人前で実物などを見せながら,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする】
この目標においては、身の回りの物事について人前で話すことですが、ただでさえ人前で話すという行為に苦手意識のある生徒のハードルを下げてあげる工夫が求められます。
例えば実物やイラスト、写真などを見せながら発表するというように、子供達が気持ちの拠り所にできるアイテムを駆使することによって聞き手の理解も簡単になり、発表した生徒もその成功体験を通して自信を深める事ができるでしょう。
実は、自分が紹介したい物や事について皆の前で発表するというこの活動は、英語圏の幼稚園や小学校低学年ではよく行われる形式です。
“show and tell”
と呼ばれるもので、自分の好きなおもちゃなどについて、皆に紹介するように発表しています。
ポイントは、やりたい子が自主的にやりたいと言って、先生に機会をもらうという事です。
弥助も英語圏の小学校で何度も観ましたが、子供たちはとてもかわいいですよ。
②【自分のことについて,人前で実物などを見せながら,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする】
次のステップとして、今度は身近なものではなく、自分の事について発表する機会を目標としています。
「自分の好きな物」や「自分が欲しい物」などについて、やはり実物やイラスト、写真などのアイテムも利用しながら発表します。
好みや欲しい物という発表のトピックが、クラスメート達の情報を知る事ができる楽しい雰囲気になるような工夫も求められるでしょう。
③【日常生活に関する身近で簡単な事柄について,人前で実物などを見せながら,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すようにする】
①の「身の回りのこと」、②の「自分のこと」に加えて、「時間」「曜日」「場所」などの日常生活に関する身近で簡単な事柄について自分の考えや気持ちを発表することになります。
スタイルは①と②と同じく、聞き手が分かりやすいアイテムの使用などを踏襲します。
外国語科の目標
外国語科としての目標
3,4年生での目標設定方法をそのまま踏襲し、5,6年生ではは英語でコミュニケーションを図る基礎を育成するとして外国語活動と同じく3つの柱を目標としています。
- 「知識及び技能」
- 「思考力,判断力,表現力等」
- 「外国語への慣れ親しみ」
【知識及び技能】
5,6年生の外国語科としての「知識及び技能」ですが、要約するとこうなります。
【外国語の音声や文字,語彙,表現,文構造,言語の働きなどについて,日本語と外国語との違いに気付き,これらの知識を理解するとともに,読むこと,書くことにも慣れ親しみ,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする】
3,4年生同様に「何を理解しているか」、「何ができるか」を体験的に身に付けていくという事です。
「知識」=「外国 語の音声や文字,語彙,表現,文構造,言語の働きなどについて,日本語と外 国語との違いに気付き,これらの知識を理解する」
「技能」=「会得した知識を、聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる」
音声の違い以外にも,文字,語彙,表現,文構造などについて英語と日本語との違いに気付き、さらにそれらが英語のコミュニケーションを図る際に活用され、生きて働く知識として理解されることを求めています。
4技能については、3,4年生の外国語活動で養われた「聞くこと・話すこと」に「読むこと・書くこと」が加わって、強化としての段階も進んでいます。
【思考力、判断力、表現力等】
次に、外国語科の「思考力,判断力,表現力等」の要約です。
【コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,身近で簡単な事柄について,聞いたり話したりするとともに,音声で十分に慣れ親しんだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり,語順を意識しながら書いたりして,自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基礎的な力を養う】
要は、3、4年生と同様に「理解していることをどう使うか」、「既にできることをどう使うか」を育成するという目標です。
- 学校の友達
- 先生
- 家族
- 自分の手に届く距離にある物
- 日常生活の中で起きる出来事
これら子供達がよく知っている事について、自分の言葉として英語で話したり、聞いて理解する体験を積み重ねるという事です。
コミュニケーションを行う順番も丁寧に意識したいですね。
- その目的や場面,状況などを意識する
- 身近で簡単な事柄について,聞いたり話したりする
- 音声で十分に慣れ親しんだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり,語順を意識しながら書いたりする
- 自分の考えや気持ちなどを伝え合う
子供達が推測しながら読めるかどうかも注意しながら、自分達で気付けるような工夫が必要です。
例えば,動物園の絵に添えられた”zoo” という単語があれば,音声で十分慣れ親しんだ語を思い出して”zoo” が読めるかもしれません。または,”book” の“b “の発音 を思い出して,”bed” を推測しながら発音することも考えられるなど、子供を観察する事が推奨されています。
【主体的に学習に取り組む態度】
最後に「主体的に学習に取り組む態度」ですが、要約すると以下の通りです。
【外国語の背景にある文化に対する理解を深め,他者に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う 】
「どのように社会や世界と関わり、よりよい人生を送るか」と言い換え、「学びに向かう力と人間性」を育む点も同じですが、唯一対象がより広い世界に向けられ、自分以外の他の人についても取り上げる点が異なります。
英語としての目標
やはり外国語科としての目標とリンクさせながら、言語としての英語の目標は、5,6年生では以下の5つが対象になります。
- 聞くこと
- 話すこと[やり取り]
- 話すこと[発表]
- 読むこと
- 書くこと
文科省の資料に何度も何度も言及されている小学校の英語授業の最重要ポイントである【言語活動を通して】を実践し、英語で聞いたり読んだりして得た知識や情報、アイデアを活用して、自分の考えとして伝えあえる事が目標である事は変わりません。
ただ5年生からのこの外国語科は国語や算数と同じ科目扱いになり、成績がつくようになります。
そのため設定される目標には「できる」という言葉が用いられています。
より具体的な評価に関する解説は、下記の章から是非!
【聞くこと】
まず「聞くこと」の目標は以下の3つの目標から構成されます。
①【ゆっくりはっきりと話されれば,自分のことや身近で簡単な事柄について,簡単な語句や基本的な表現を聞き取ることができるようにする】
外国語活動とほぼ同じですが、それを踏まえて基本的な表現を聞き取れるようになるという事ですね。
ポイントは目標が【できるようにする】と変わっている点です。
②【ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,具体的な情報を聞き取ることができるようにする】
3,4年生での英語の音への慣れ親しみに基づき、さらに「日常生活に関する身近で簡単な事柄」は5,6年生になればより幅が広がる事でしょう。
③【ゆっくりはっきりと話されれば,日常生活に関する身近で簡単な事柄について,短い話の概要を捉えることができるようにする】
簡単な語句や基本的な表現で話される短い会話や説明を聞いて,一語一語や一文一文の意味などにとらわれることなく,話されること全体の大まかな内容が分かることを求めています。
【読むこと】
「読むこと」は5,6年生の外国語科から新しく加わった技能です。
しかし、3,4年生でも大文字と小文字の読み方を習っているので、それを基礎にして少しずつ慣れていく事が可能です。
「読むこと」は、2つの目標から構成されています。
①【活字体で書かれた文字を識別し,その読み方を発音することができるようにする】
これは3,4年生の外国語活動の「聞くこと」で例に挙げた目標とほぼ同じで、文字と文字の名称の関係性を一致させて、「聞くこと」だけでなく「読むこと」にも応用するという事です。
「Kは/kei/」、「Aは/ei/」であるという関係性で読めれば、この時点では大丈夫です。
②【音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする】
この目標は、3,4年生の外国語活動で慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を読めるようにするという事です。
例えば教室に貼っている掲示物や教材からも情報を得られたり、絵本のストーリーを追えるようにします。
【話すこと(やり取り)】
多くは外国語活動の延長で、幅を広げていく事が基本的な目標となります。同じように3つの目標から構成されています。
①【基本的な表現を用いて指示,依頼をしたり,それらに応じたりすることができるようにする】
3,4年生の外国語活動では知り合いとの挨拶であったのに対して,クラス替えによる新しい友達や新しく赴任したALT等の初対面の人に対しても、物怖じせずに挨拶ができるようにします。
また,外国語活動では指示や依頼に応じるだけでしたが,5,6年生からはそれに応じたり断ったりすることも可能になるよう指導します。相手の依頼に対して,自分で考え判断して,伝えるといったことを大切にしたやり取りが求められますね。
②【日常生活に関する身近で簡単な事柄について,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うことができるようにする】
5,6年生の外国語科での「話すこと(やり取り)」では,3,4年生の身の回りの事柄から発展し,自分の考えや気持ちなどを伝え合うことを求めています。
「日常生活に関する身近で簡単な事柄」とは,日々の生活の中で児童が繰り返す出来事や習慣的なこと,あるいはその中で用いたり,接したりするものなどであり,自分の考えや気持ちなどを伝え合う必然性のある活動となるよう工夫が必要です。
③【自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いてその場で質問をしたり質問に答えたりして,伝え合うことができるようにする】
5,6年生の外国語科では,3,4年生での2年間のやり取りの経験や①と②を踏まえ,質問したいことを自分で考えたり,質問に対して自分の考えで答えたり,自分の力で伝え合うことを目指しています。
簡単な語句や基本的な表現を用いてのやり取りとして,その場で質問したり答えたりすることができるようになることを求めています。
【話すこと(発表)】
次に「話すこと(発表)」もやはり3つの目標から構成されています。
①【日常生活に関する身近で簡単な事柄について,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする】
3,4年生の外国語活動と同様に、実物やイラスト、写真などを見せながら発表するというように、子供達が気持ちの拠り所にできるアイテムを駆使しながら発表させ、生徒にその成功体験を通して自信を深めさせる点は同じです。
唯一異なるのは5,6年生になって、身近な事柄がより高学年のそれに変わっている事でしょう。
②【自分のことについて,伝えようとする内容を整理した上で,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする】
①と同じく、高学年になって変わった自分の事、自分の事に関する身近な事柄について発表ができるようにします。
③【身近で簡単な事柄について,伝えようとする内容を整理した上で,自分の考えや気持ちなどを,簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする】
①と②を踏まえ、自分の考えを思いめぐらす範囲を教室から学校、学校から地域へとさらに広げ、高学年らしいトピックで発表できるようにします。
【書くこと】
5年生になって新しく加わる技能のもう一つが「書くこと」です。
以下の2つの目標から構成されます。
①【大文字,小文字を活字体で書くことができるようにする。また,語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする】
この目標で求められているのは、以下の2つです。
- 大文字及び小文字を正しく書き分けること
- 語と語の区切りに注意して,音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すこと
4線を使って文字の高さや、「p,q」,「b,d」などの紛らわしい形などを意識させる工夫が求められます。
また,文字の形の特徴ごとに教えるなど、もし子供達が理解しやすいならばアルファベット順に指導せず、以下のようなグループに分けた覚えやすい順番なども推奨されています。
- A,H,I などの左右対称の文字グループ
- Cc,Jj,Kk などの大文字 と小文字の形がほぼ同じ文字グループ
また,「語順を意識しながら」という目標に沿って,下の例のように語順を入れ替えれば反対の意味になるなど, 英語では意味の伝達において語順が重要な役割を担っている事を理解させます。
- “Sakura pushed Taku.”
- “Taku pushed Sakura.”
②【自分のことや身近で簡単な事柄について,例文を参考に,音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする】
この目標は,英語の文章を参考にして,その中の語や文を自分が表現したい内容のものに置き換えて書くことができるようにするという事です。
例えば,名前や年齢,趣味,好き嫌いなど自分に関する事柄について,英語で書かれた文章の一部を自分の事に置き換えます。
その際,例示された中に生徒の表現したい語句や文がない場合は,先生がその生徒が書きたい内容を英語で提示します。
せっかく生徒が積極的に書こうとした気持ちに柔軟に対応する必要があるとされており、英語力の低い先生はすこし苦戦するかもしれませんね。
またこちらの章では、5,6年生の授業の内容をより深く解説しています。お時間があれば是非!
まとめ
この章では、子供達にどうなって欲しいのかという、小学校から英語の授業を導入する目標について解説してきました。
もう一度内容をまとめると以下の通りです。
- ・小学校中学年→小学校高学年→中学校と、一貫して生徒が英語でコミュニケーションが取れるようになる事を共通の目標としている
- しかし、小学校の英語の授業導入は中学校で学ぶ英語のための基礎固めであり、前倒しの結果ではない
- 3,4年生の外国語活動では、「聞くこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」の3つについて慣れ親しむ事が全体の目標
- 5,6年生の外国語科では、上記3つに加え「読むこと」「書くこと」の5つについて、慣れ親しむだけでなく、できるようになる事が全体の目標
- 5,6年生では年間の勉強を評価されて成績もつけられるため、語尾が「できる」という目標になっている
山登りをする際に、頂上がどこにあるのか分からなければ決して登頂することはできないのと同じく、目標がどこにあるのか分からなければ努力のしようがありません。
小学校の先生方と保護者の方は、この全体の目標と4技能の個別の目標を把握する事ではじめて、どういった指導、アドバイスができるかが理解できるはずです。
子供達が英語で自分の考えを伝えられるグローバルな人材になれるロードマップを、これら目標の理解から導き出しましょう。
ただ真面目にばかり取り組んでも、楽しくなければ継続できないのが子供です。英語への関心を高める為に、子供たちが興味のある、例えば鬼滅の刃などを授業に取り入れるのはいかがでしょう?