小学校教員の「英検準1級以上」取得率は何%?どう改善?

3. 小学校の英語授業を徹底解説!
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保護者が気になる先生の英語の実力とは?改善までの具体的な道筋

保護者の方はもちろん、当事者である全国の小学校の先生方の間でも、実際のところ【小学校の先生の英語力】はどの位であるのか気になるところでしょうか?

よく抱かれるイメージは、英語を話せない先生に習っても、子供は英語に慣れ親しむどころか、つまらないし分からないという理由で

早い段階で英語を嫌いになる】のではないか?

という懸念かと思われます。

その指摘が正しいかは人それぞれだと思いますが、小学校の先生の英検準一級の取得率

【1%】です。

この章では、文科省が把握している小学校教師の英語力を、さまざまな数字を元に確認します。

そして、文科省が現状に対応したどのようなサポートを提供し、またどのように教師それぞれの英語を指導するスキルを底上げしようとしているかを説明します。

気になる小学校の先生の英語力は?

文部科学省の令和元年度「英語教育実施状況調査」という資料を参考に、大切と思われる要点をまとめると以下の事が分かります。

まずは純粋な英語力という面については、このグラフで確認できます。これは、全教員のうち【英検準一級】レベルに到達している先生の割合です。

小学校は調査対象が19,187校、調査対象教師数が336,638人です。

この調査結果だけを見れば、

「えー!? たったの1%!?」

が、正直な感想です。

今現在、小学校教師の英語力は全く高くないし、ここ数年の間に改善もされていないと判断せざるを得ません。

このグラフを正直に公開している文科省に敬意さえ感じます。

中学校と高校の教師には、この英検準一級の取得率が全体の50%を超えるよう求められています。中学校教師はまだ達していませんが、高校教師は2013年でも既に達成していますね。

中学校・高校の教師に比べて、小学校教師の英語力が低すぎるように感じますが、そもそも今まで求められてこなかったのですから仕方のない事です。

この50%を超えるようにという目標も小学校教師は始めから除外されています。

そして、今回の小学校の英語授業改定は、

【英語のテストの点数を上げさせるという目標ではなく、英語をコミュニケーションの手段として活用し、グローバルな環境で活躍できる人材を育てる】

という趣旨でした。

つまり、受験英語のための勉強ではなく、世界で自分の意見を言えるような英語力を育てるという事ですね。

英検準一級といえばTOEICでは730点位に相当すると言われています。

満点の990点を何度も取っているTOEICの受験者が英語で外国人とコミュニケーションを取れるかというと、それは全然別問題という現実もあります。

小学校の先生が英検を取得していなくても、子供達に自分の考えを英語で伝えるスキルを教えられないとは、一概には言い切れません。

そして、文科省が担任の先生に英語を教えて欲しい理由はちゃんとあります。それは先生方が、

生徒たちの性格や好きなもの、得意なこと、家族も含めた生活環境を熟知している」からです。

文科省の狙いである、英語でコミュニケーションが取れる訓練としての授業は、何度も何度も登場する【言語活動を通して行う】基本方針に沿って行われます。

これはつまり、自分自身の事について相手に伝えあう双方向のコミュニケーションです。

子供達それぞれが何に興味を持ち、何を語りたいと思っているのかを一番理解している存在として、担任の先生がそれを引き出す事が期待されているのです。

文科省は教師をどうやってサポート?

だからこそ小学校での英語教育の導入を考えた当初、文科省も教える側である教師の英語力についても当然考えた事でしょう。

だからこそ

  • 準備のための移行期間を何年も設け、
        
  • さまざまな研修を実施し、
        
  • 教師が指導のために参照できる資料や動画を山ほど準備し、
         
  • 現場でもサポートできる仕組み・人員も用意しました。

以下、その具体的な教員をサポートするための仕組みです。

外国語指導助手(ALT:Assistant Language Teacher)を活用する

「日本語にはない”th”や”v”といった発音を正しくできる自信が無い」

「イントネーションやアクセントを正しい英語の発音で行う自信がない」

このように思っている小学校の先生は多い事でしょう。

それまで特に英語を指導するトレーニングを受けてきていないのですから、やり方が分からなくても当然です。

そこで文科省は、発音に関することや、海外の文化への興味を育むための母国に関するプレゼンなど、積極的にALTを活用することを勧めています。

現在、ALTといってもさまざまな契約形態があり、文科省の資料にある全国の人数は以下の通りです。

JETプログラムによるALT2,651
自治体が独自に直接任用しているALT2,639
派遣契約によるALT2,789
請負契約によるALT1,186
上記のほか、「補習などのたまの指導員等派遣事業」のうち、小学校における外国語活動(英語)で活用している人数512
その他のALT等(日本人)2,251
その他のALT等(外国人)1,298
13,326

調査対象教師数が336,638人であることと比べると随分少なく感じますが、全ての英語の授業にアテンドするわけではなく、文科省の資料によると授業数合計19,176回のうち、100%全ての授業にALTを活用した割合は21.7%に留まります。

まとめたこの表によると、全く活用しない例も1.3%あるようですが、平均活用率は63.7%。授業の3回に2回は活用している様子が伺えるので、浸透していると言えるでしょう。

ALTを活用する割合0%1-20%21-40%41-60%61-80%81-99%100%
ALTを活用する授業数2431,2022,8165,0163,2742,4604,166
全体に対する割合1.3%6.3%14.7%26.2%17.1%12.8%21.7%

さらに、どういう授業内容に活用したかの調査では、以下の表にまとめましたが、やはり最も多いのは発音に関する授業内容ですね。数値は学校の数です。

積極的に活用時々活用活用してない
教師とのやり取りを児童に示すやり取り・発表のお手本17,5681,380259
パフォーマンステスト等の補助6,9075,3546,926
児童のやり取りの相手17,0021,922263
発音のモデル・発音指導18,411520256
児童の発言や作文等に対するコメント・フィードバック8,4887,9472,752
外国語の授業街での児童との交流7,6718,1033,413

結果、積極的にALTを活用した学校は全体の82.2%にのぼりました。

このように何でもかんでも担任が行うのではなく、ALTをはじめとして様々な人の力を積極的に借りてしまおうという発想は悪くないでしょう。

  • 英語専任の先生や地域の教員指導員
  • 中学校や高校の先生
  • 特別非常勤講師、
  • 海外経験のある地域のボランティアや協力者

子供達もいつものように担任が授業をする代わりに、外からゲストがくれば何かワクワクするものですし、英語指導に関する担任教師の負担も軽減できます。

文科省が提供する指導素材や教材を活用する

文科省は担任が外国語活動や外国語科の授業を行うサポートのために、教師の研修を担える資料と動画などの素材を提供しています。

そのまま使える年間指導計画案や学習指導案を提供しているので、本当に自信がない教員はそれに従えば大丈夫なように考えられています。

さらに教材の各Unitごとにも指導プランを具体的に例示していますし、実際の授業を動画で配信されており、教員それぞれが自分の授業に応用できる事を期待しています。

実際の授業においても、発音に自信がなければデジタル教材を活用する事も可能です。

たとえ周りにアドバイスしてくれる先輩や同僚の教師がいなくても、自分一人でも参考にできる資料は文科省のホームページから自由に閲覧・入手が可能です。

教師の育成プランは?

最後に、文科省がどのように担任教師の英語を教えるスキルを伸ばそうと考えているかについてですが、これも文科省のホームページにいくとわかるのですが、各都道府県ごとにカスタマイズされた「英語教育改善プラン」が47種類用意されています

どのように小学校・中学校・高校と連携させていくかまで網羅した、それぞれの都道府県の教育委員会が策定したプランを文科省が統括している形になっています。

内容はそれぞれの都道府県ごとに異なるので、以下のURLからお住いの都道府県のものを参照して頂ければと思います。

それぞれの都道府県によって呼び方も役割も変わるようですが、基本的には域内の学校を巡回して教師を指導する「外国語巡回指導員」のような人がおり、研修を開いたり直接授業のやり方を現場で教えて回るスタイルが多そうですね。

教師の研修も、内容や時間数など各都道府県ごとに独自に行われますが、内容については文科省の外国語活動・外国語科の趣旨と目標があります。

その内容に沿って具体化されたものなので、それほど大きな差は無いと思われます。

また、これからの小学校教師の採用においても、その教職課程の見直し一定の英語力を有する人の採用を増やす予定も含まれます。

北海道の例で言えば、令和6年までに50%は英語力を有する者を採用するとしています。

巡回指導員とは?その具体的な役割とは?

数年間をかけて小学校の英語授業導入の準備を行い、さまざまな研修が行われているとはいえ、各自治体の学校も小学校教員の底上げはできたと一定の成果を求めつつ、

  • 英語で話す機会や時間が不十分である
         
  • 教員の英語力が不十分である

こうした課題はまだ残っている事も認めざるを得ない状態です。

そこで一つの改善策として各自治体で名前は違うかもしれませんが、巡回指導教員が活用されています。

導入の目的

巡回指導教員は基本的に自らお手本となる授業を行い、また先生の授業に参加して後でフィードバックを与えるのが主な役割ですが、具体的に何を期待されているかというと、自治体ににもよりますがほぼ以下のような成果です。

  • 授業実践や授業参観、外国語教育に係る研修を通して、効果的な指導方法を探る
        
  • 新学習指導要領の全面実施を支える
        
  • 多くの教員がその指導方法を日々の授業で生かし、授業実践を積み重ね、全ての教員が自信をもって新学習指導要領の全面実施を行える

巡回指導員が各単元の授業について最適な指導方法を模索し、それを先生方にも下ろしてやり方から全て伝授し、最終的に先生の英語指導の質を底上げするという事ですね。

巡回スケジュール

巡回指導員がどのように各学校を担当しているのかという具体的な状況についても、大体は同じようなスタイルがとられているはずです。

一人の巡回指導員はメインで担当する本務校を持ち、さらに兼務校を8校くらい受け持っていると思われます。例えばですが、

Week1本務校兼務校A兼務校B兼務校C兼務校D
Week2本務校兼務校E兼務校F兼務校G兼務校H

このように1日1校に出向いて、それぞれの学校で割り当てられたクラスの授業を行ったり、先生の授業をサポートするイメージですね。例えばこんな時間割で動くイメージです。

1時間目外国語活動チーム・ティーチング3年1組
2時間目外国語活動チーム・ティーチング4年3組
3時間目外国語科チーム・ティーチング6年2組
4時間目外国語科チーム・ティーチング5年1組
5時間目次週の授業や研修の準備
放課後担任の先生やALTとの打ち合わせ、英語力向上のミニ研修

巡回指導員の具体的な業務

では実際、具体的にはどのような指導を行っているのでしょうか?自治体ごとに多少の差はあるでしょうが、文科省の指導内容に基づき大体はこのような感じと思われます。

【学級担任とのチーム・ティーチング】

  • T1(授業を担当する先生)としての指導の在り方やALTとのかかわり方について、自らがお手本となる実践をとおして先生方に提示
        
  • T2(授業を補佐する先生)として授業に関わり、T1の改善点について授業後に助言

【模範授業】

  • 巡回指導教員1人による指導、またはALT等とのチーム・ティーチングを実施して先生方に模範を提示
         
  • 5、6年生の学級担任だけでなく、全教員が参観し、教員全体の指導力を向上

【授業づくりに関わる支援】

・「Let’s Try!」と「We can!」それぞれの教材の活用の仕方について支援
     
・教材の提供やデジタル教材の効果的な活用をサポート

【研修の実施】

  • 本務校及び兼務校において外語供御活動に係る校内研修を実施
         
  • クラスルームイングリッシュの活用
          
  • アクティビティなどの効果的な活用

【各種研修会や研究会での講師活動】

  • 市町村教育委員会などが主催する研修講座などの講師
         
  • 市町村の教員全体を対象にした授業公開

【その他】

  • 小学校教員の指導力及び英語力の向上に資する研修資料の発行
          
  • 兼務校における優れた実践を本務校や他の兼務校に普及する役割

こうした巡回指導員がサポートで回っている学校でのそれぞれの事例を咀嚼し、さらなる改善を図るための施策に変えて伝播させることにより、さらにより良い効果的な指導方法や、逆にこうするとこうなってしまうという反面教師的な事例を多くの学校でシェアできる効果が高いと思われます。

【奈良市の取り組み事例】英語教育推進リーダーによる専科教員の活用

最後に、実際に奈良市で行われた、小学校担任教員の英語力の底上げ策について、その導入目的から成果までを紹介します。

ここでは、中学校の外国語科教員免許を持つ「英語教育推進リーダーと呼ばれる専科教員」が、小学校2校を担当した実例です。

取り組みの狙い

まず、英語教育推進リーダーの働きによって、期待された内容は以下の2点です。

  • 中学校で英語を教える教員免許を持つ専科教員が自ら授業を進めるのではなく、学級担任と一緒に授業を行ったり、授業後に指導助言を行うことで、勤務校の全ての教員の指導力向上を図る
         
  • 勤務校以外の学校で研修講師を行うことで、市内の小学校教員の授業力向上を目指す

教育推進リーダーの日課表

次に教育推進リーダーの1日の予定はこのような感じです。

1時間目各学級担任やALTとの打ち合わせ
2時間目外国語チーム・ティーチング5年1組
3時間目外国語チーム・ティーチング4年1組
4時間目外国語チーム・ティーチング3年1組
5時間目外国語チーム・ティーチング6年1組
6時間目次週の授業や研修などの準備
放課後学級担任と授業の振り返りや打ち合わせ、英語指導力向上研修実施

具体的に実施した主な業務

【授業づくりに関わる支援】

  • めあて(CAN-DO)の提示や振り返りを行うなど、授業の基本的な流れを教員間で統一する
        
  • 時間学習の指導計画や各種教材を作成する
         
  • デジタル教材の活用を促進する

【学習環境の整備】

  • ポスターなどの視覚教材を活用した英語教室の環境整備を行う
          
  • 廊下や階段に英単語カードを提示するなど、文字に慣れ親しむ環境を整備する

【学級担任とのチーム・ティーチング

  • 指導の在り方やALTとのかかわり方について、各学級担任に実践を通して指導する
          
  • 学級担任が主として行う授業にT2として関り、授業後に学級担任に対し助言を行う

【研修の実施】

  • 勤務校での2校舎合同研修を実施する他、市内の各学校で、効果的な指導法やクラスルームイングリッシュ、パフォーマンス評価や評価基準の在り方についての研修講師を務める

得られた具体的な成果とは?

教育推進リーダーが導入、活用された結果、奈良市が把握した成果は以下の通りです。

  • 小学校教員の英語力・指導力の向上
         
  • 授業の進め方について、全ての教員で共通理解ができた
         
  • アクティビティなどを、学習のねらいに応じて効果的に活用できるようになった
         
  • 評価方法及び評価基準が明確になった
         
  • 担任によるスモールトークや絵本の読み聞かせが定着した
          
  • 全ての教員が自信を持ち、より積極的に外国語の授業に取り組む事ができるようになった

成果が具体的に把握されており、一定の成果があった様子が伺えますね。

まとめ

やはり保護者が気にかけるのは、小学校の先生が今までに教えた経験がない英語を満足のいく形で教えられるのか?という事だったと思います。

5,6年生からは成績もつくので、心配もしている事でしょう。

ここまで見てきた結論は、以下の通りでした。

  • 現状の小学校教師の英語力の低さは否めない。英検準一級レベルの英語力を有する教師は全体の1%
         
  • しかし、担任に求められるのは子供達の個性や好みを把握している強みを、英語でのコミュニケーションを図る言語活動に最大限生かす事
         
  • 教師のスキルを補うために、ALTを積極的に利用する
         
  • 周りにアドバイスを求められる環境でなくても、文科省のホームページには指導のための参考資料も動画で指導する素材などが豊富に用意されているので、個人でも活用できる
         
  • 動画やデジタル教材など、文科省が用意した教材を用い、指導計画に従った授業計画をたてられる。教科書の内容はUnitごとに参照できる指導例まで入手かのうである
         
  • 教師の英語レベルの向上には、各都道府県が独自に改善プランを立案しており、研修や巡回指導員の指導など、教師がレベルアップするサポートが用意されている

英語の授業化はまだ始まったばかりで手探りの状態ですが、教師の英語力の底上げによって、状況はよくなっていくと思われます。

言い換えれば、英検準一級レベルの英語力を有した教師が1%しかいない現状より悪くなる事はないでしょうという事ですが、とにかく今は子供達のために少しずつでも良くなっていく事を祈りたいと思います。

    

別な章では、小学校の英語教育のために開発された新教材の特徴についてわかりやすく解説しました。お時間があれば是非!

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