ホームステイの当たり外れ問題を20年の実経験から詳しく解説~前編~
高校留学において、学生の滞在先はやはりまだホームステイが主流です。寮という選択肢もありますが、私立などの一部で強制だったり選択できる感じですね。
きっと、実際に留学を控えていたり、これから留学したいと考えている学生は、自分があちこちから入手した妄想をどんどん膨らまし、理想のホストファミリーと彼らに囲まれた楽しい海外生活を夢見る事でしょう。
しかし、環境が恵まれるかどうかで留学生活の満足度が相当左右されるだろうホームステイについて、
- 実際の所はどうなのか?
- 環境が悪ければ変えてもらえるのか?
- それともずっと我慢しなければならないのか?
この章では、そうしたホームステイの当たり外れの現実について、海外20年の実際に見聞きしてきた経験を基に背景と理由について詳しく解説します。
ホームステイの思い出は、最高?最悪?
まず皆が気になるホームステイの現実について、20年の海外暮らしと留学事業の経験から言うと、留学を終え、ホームステイについての感想を聞いた学生は次のどちらかのタイプに分かれます。
- 自分の家族がもう一つ出来たので最高でした、今でもずっと連絡取り合っていますと、満面の笑みで話すタイプ
- ホストが最悪で家に居ても全然会話が無かったですし、このやるせなさを誰にぶつければいいのか分かりませんと、不満気に話すタイプ
これは実際に統計が取れるデータでは無いので主観になってしまいますが、敢えて割合を言うと4:6で後者が多い印象です。
学生からの回答自体が彼ら・彼女らの主観に基づくものなので、いいファミリーじゃない、家も綺麗だしいい人達だしと、第三者から見ればそう思われる場合でも、相性が合わない、お互いにすれ違いや誤解があれば、最悪な思い出になるので評価が難しい所です。
それでも、出来るだけ客観的・総合的に判断してみて、やはり4:6がしっくりくるかなという感じです。
現実が二つに分かれる理由とは?
では、どうしてこうもはっきり二極化するのでしょうか?この原因は以下の様な事例が考えられますが、そのまま対策に直結する重要な部分ですね。
- 学生の期待がとにかく大きい
- 文化の違いから誤解が生じる
- お金目当てのファミリーが増えた
この部分、一つずつ見ていきましょう。
学生の期待がとにかく大きい
自分が滞在するファミリーはどんな人達で、実際に暮らすのはどんな家だろう?と妄想をふくらましている学生に、あまり期待するなと言う方が無理というものです。
それでも、初めから相性がバッチリ合って最後までただただ楽しかったという子もいれば、中には本当に根っから大人びていて「どんな環境でも自分次第ですから」と言い切って馴染む学生もいます。
が、ほとんどは自分自身が日本から持ってきたファミリーの理想像と現実が折り合わず、初期の段階でガッカリするパターンが多い印象です。
ただし、ここから更に二つに分かれるのですが、ガッカリしつつもファミリーとの生活を楽しもうと気持ちを切り替え、自分が留学に慣れて成長するのと共に、初めに感じたファミリーへのガッカリ感が完全に覆されて、結果最高だったに変わるタイプ。
そして、こんなはずじゃなかったという気持ちを変えられず、それをファミリーも感じて、更に悪循環に陥っていくタイプです。
文化の違いから誤解が生じる
日本の常識は海外の常識とは限らず、逆ももちろん起こり得ます。
例えば、学生が日本食を作って振舞った時、ファミリーが何も言わずに勝手に食べ始め、おいしいと食べるものもあれば、”Interesting“と言ったのに一口も食べずに全部残されて嫌な思いをしたという様な事も起こり得ます。
そもそも「いただきます」という文化はありませんし、”Interesting“は海外における建前のようなもので、「好きじゃない」という代わりに使う言葉で、学校で習う「興味がある」という意味ではありません。
また言いたい事は我慢せずにはっきり言うという海外特有の慣習の違いも、特に引っ込み思案で自分の意見をあまり言えないタイプの学生には、必要以上に怒られた、酷い事を言われたという不平となって、LINE経由で日本の家族の知る所になります。
こうした文化や言葉の誤解から、本来知っていれば問題にすらなっていない不満について、学生や保護者から相談される事が絶えないのが現実です。
お金目当てのファミリーが増えた
これは、学生側に一切非がないケースです。
十年、二十年前と比べ、空いている部屋に学生を住まわせる事で対価を得る副業として、はっきり割り切って受け入れるファミリーの割合が確実に増えました。
海外の住宅は大きいので部屋が余っている事が多く、それをリソースとしてプラスαの収入を得る手段としてポピュラーになった事も大きいと思います。
実際にその動機を面と向かって言われた事もありますし、お金を稼ぐ手段という観点からの苦情を聞いた事も一度や二度ではありません。
生活面の具体的な現実とは?
食事面
まずは朝食ですが、ほぼ100%シリアルと牛乳、トーストのみ、フルーツのいずれかを自分で準備します。アジア系のお母さんがいるファミリーでも、朝からそこそこ手間のかかったご飯を作ってくれる事は、ほぼ皆無です。
ランチは、80%は自分で作って持って行く形式でしょう。食パンにチーズやハムなどを挟んだだけのサンドイッチが定番です。要領のいい子は、プラスピーナッツバターやチョコレートペーストをぬったサンドイッチも作っていくという感じです。
前の日の夕食の残りをタッパに詰めて、学校でチンして食べるパターンもあります。
ディナーは、一番ファミリーの差が出る部分ですが、それでも日本の家の夕食と比べると質素に思えるメニューがほとんどででしょう。よく知っているファミリーは日本人だからとお米を炊いてくれるかもしれませんが、大多数ではありません。おかずだけ、おかずとサラダがほとんどでしょう。
日によっては、夜でもマクドナルドのテイクアウェイという場合もあるでしょう。
掃除・洗濯面
留学の目的の一つは、人間として自立するという側面もありますので、そもそもネガティブに捉えるべき問題ではありませんが、掃除と洗濯は学生が自分自身でやるべきものとされています。
大体の留学において、ホストファミリーに到着した当日か翌日に洗濯機の使い方を教えてもらい、週に何回洗濯していいのかを確認し、手持ちの衣服と相談しながら自分の分は自分でするのが基本です。
たかが洗濯、されど洗濯で、あまり雨が降らず水が貴重な地域では過度の洗濯回数を咎められる事もありますし、洗濯機を回す時間への常識や感覚のズレも注意される原因になりがちです。
掃除についても、海外では自分のベッドを毎朝ベッドメーキングする事が最低限の常識です
ここを怠っていると、自分の部屋であっても閉め切らずにドアを開けておく事が多い海外の家庭では、開いたドアから起きだしたままの状態のベッドを見られて、この学生は部屋を汚く使っていると言われてしまいます。
また、リビングのソファやダイニングテーブル等の共同スペースに、学校の教材やスポーツの道具など自分の私物を置きっぱなしにしておくと、これも掃除が出来ないというレッテルを張られ注意される原因となります。
結論~こうした現実を受け入れる事が第一歩~
たとえ日本において日本人同士であっても、家や部屋をシェアする事は簡単な事では無いでしょう。
ましてや、異なる文化と習慣を持ち、言葉での意思疎通を100%は行えない海外という環境の中で、問題が起きないという方が不自然です。
それでも最初に定義した通り、4:6の4の学生達は、ファミリーと本当に楽しい思い出をたくさん作って大満足で帰国している事も忘れてはなりませんが、未知の留学について知りたい事は、こうした可能性のあるネガティブな側面だと思われます。
ですので、こうした現実がホームステイの現実であり、そういうものなのだと受け入れるプロセスをやはり飛ばす事はできません。
次の章では、どうすればこれら現実を乗り越え、もしくは乗り越えるまでは難しくとも、とりあえず受け入れつつ改善していける具体的なマインドセットと行動について示唆してみたいと思います。
そういう訳で後半に続きます!