プロ英語コーチが分析する「テストは得意でも英会話はできない」理由
プロの英語コーチとしてスピーキングを教えはじめて以来、実感していることがあります。
TOEIC900点も取れているのに、どうして英会話になるとこんなにたどたどしい理由を、誰も真剣に深堀りしないんだろう?
コロナ禍でオンラインでの仕事の機会が格段に増えたこれからの時代、スピーキングの必要性はさらに高まりました。
もう、英語でのオンラインミーティングやプレゼンの機会は避けては通れません。待ったなしです!
何をする場合でも、真っ暗な道を手探りで歩くより、明るい道を自信を持って歩く方が簡単ですよね⁉
この章では、英語の勉強は十分にしてきたのに英会話になると全く話せない理由を元に、それらを改善することでリスニング力とスピーキング力を圧倒的に伸ばせる秘訣をお伝えします。
仕事では問題の原因は徹底的に分析しますよね?
みなさんが、仕事上起きた問題について対策しなければならない立場にある時、まずはその問題が起きた理由を徹底的に分析しますよね?
そうしなければ対策の立てようがないはずですから、当然のことです。
もし原因の分析を疎かにし、過去の経験や前例だけにこだわり、当てずっぽうに解決を図ろうとして失敗した社会人を見たら、こう思うのではないでしょうか?
何て仕事のできない、無能な人だろう?
では、TOEIC900点以上の人が「自分が英語を話せないのはどうしてだろう?」と深く考えない理由はなんでしょう?
日本における最も多い理由は、「まだ必要性がない」だと思いますが、今後はそうはいかないでしょう。
「やっぱりスピーキング力を伸ばして流暢な英語を話したい!」と決意した時、それでも実際に話せない理由を明確にせず、これまでのTOEICの勉強だけを続けたとしたら、前述の無能のレッテルを貼られた社会人と何が違うのでしょう?
普通に考えれば、TOEIC900点を取得しているのに、英語を話せないほうがおかしいと思うはずです。
しかしそうじゃないならば、何か理由があるはずです!
そうなんです、実は3つあります!
・イントネーションとアクセントが全然違う
・リンキングなどで生じるリズムが全然違う
・実際の発音と、その単語の発音記号が全然違う
この3つを常に意識して、さまざまな練習を積みさえすれば、これまで勉強してきたTOEIC900点の知識と結びつき、スピーキングの能力が一気に開花します!
これまでしてきた勉強を無駄にせず、スピーキングにも生かさない理由は何もないですよね!
英語のイントネーションとリズムの改善こそが最重要項目
どうして日本人にとって、英語のリスニングは難しく、スピーキングは通じにくいのでしょうか?
この発音に関する質問への、最も根本的な回答は、
日本語が平坦に、強弱をあまりつけずに話す言語だからです。
そしてさらに、
抑揚をつけて読んだり、話したりする訓練を受けてきていないからです。
中学校の頃を思い返してみてください。
教室で英語の教科書を読みなさいと立たされたあの日、あなたは抑揚をつけて音読していたでしょうか?
何かカッコつけてるみたいだし、周りの友達に変な風に思われるからといった気恥ずかしさで、日本語と同じように平坦に読んでいたのではないでしょうか?
そのまま英語の先生に修正もされないまま、英語のイントネーションとリズムを意識することなく、単語を覚え、録音された音源を聞き、長文読解する”英語の勉強”をしてきたのではありませんか?
つまり、テスト用の英語の勉強は誰よりもしていても、英会話の勉強は全くしていないも同然という人が多いのではないかと思われます。
まずはその点を理解し、「一から英会話を勉強すればいい!」と割り切りましょう。
英語の発音を「いろはのい」から始め直すに当たって、最も意識すべきは以下の2点に尽きます。
・品詞ごとの抑揚や、語尾の上げ下げや、単語ごとの正しいアクセントとも結びついた、意味の強弱を表すイントネーション
・品詞ごとの強さと速さの違いや、音同士が繋がったり、短くなったり、消えたりしながら生み出す独特のリズム
この2つの訓練を受けていないのですから、暗闇の中を歩いているように難しく感じても致し方ありません。
何度も言いますが、練習してないのにできる訳がないんです!!
弥助が英語を学び始めた頃、「Let’s go to McDonald’s.」という英語が通じなかった体験は忘れられません。
今なら分かります。
平坦に「マ・ク・ド・ナ・ル・ド」と6音節で発音していたからです。
レンタルビデオショップで、店員さんに何度”The Mexican“はどこ?と尋ねても理解されなかったのも、今なら分かります。
“The Mexican“ではなく、”The Mexican“とアクセントの位置を間違っていたからです。
こうしたイントネーションとアクセントを修正すると、あなたの英語スピーキングがなぜ上達するのでしょう?
答えはこちらです。
そして、リズムに関しては、先のマクドナルドの例を再び持ち出せば、英語の発音はこうなります。
「マダ(↑)ーノ(↓)ーズ」と抑揚をつけて、タタータと三拍で発音
二つを比較すれば、平坦な6音節のリズムと、抑揚のある3音節のリズムです。
全然違います!!!
そりゃあ通じません…。
このように、平坦で全文字に音節がある日本語と、抑揚が大きく母音にしか音節の無い英語では、発音する時のリズムが全然違ってきます。
特に日本語でもカタカナで使っている英語を話す時は、最も注意が必要です。
そしてさらに英語を発音する際のリズムを難しくさせるのが、リンキングと呼ばれるさまざまな発音パターンの存在です。
・”I’ll”、”We’re”などの短縮形
・”an apple”を「アナポゥ」とつながる連結形
・”sent to me”を「セントゥミィ」と”t”を一つ落とす脱落形
・冠詞や代名詞、助詞を弱く発音して他の単語につなげる弱化形
・”t”や”d”の音が母音に挟まれて「ラ行」に変わるラ行化形
・etc…
おそらくこれまでの英語の勉強の中で、これらリンキングについては全くと言っていいほど、勉強してきていないのではないでしょうか?
しかし、リスニングで聞き取れない部分がある理由も、そのほとんどはこのリンキングが絡んでいます。
つまり、私たち日本人が全く馴染みのない単語に聞こえてしまうので、何と言っているのか分からないのです。
例えば以下の例文を見てみましょう。
“I have to submit him an idea of the new product concept in a minute.“
「新商品のアイデアをすぐに彼に提出しなければなりません」
この文章をあえてカタカナで書き出せばこうなります。
「アイ ハフタ サブミッティム アナイディア オヴダニュウプロダク コンセプイナミニッ」
・have toがハフタに
・submitのtとhimのhが連結
・an ideaが連結
・of theが連結
・productとconceptのtを発音しない
・conceptからつながりin a minute全体を連結し、さらにminuteのteは弱く発音
この一文だけで、これだけのリンキングがなされています。
いわゆるカタカナ英語の感覚で発音していたら、「アイ ハフトゥ サブミット ヒム~」と全く別物な発音になることは言うまでもありません。
ここを理解していなければ、そりゃあ通じませんし、上の例のようにリンキングだらけの文章を言われても聞き取れません!
だからこそ、スピーキング力をつけてペラペラに話したいと願うのであれば、このリズムの練習が必要なんです。
あなたがリンキングを習得する方法は、スピーキング力を上げる3つのステップの2つ目のこちらです!
発音記号通りの発音が、プライオリティで3番目の理由
スピーキング力を劇的にあげるためには、発音記号通りの発音ができるに越したことはありません。
しかし、その練習過程においては、イントネーション、アクセント、リズムの練習を優先し、発音記号のチェックは後回しでいいと思っています。
その理由は、世界にはたくさんの種類の英語があり、それぞれ特有の発音があることからも分かります。
インド人の英語の様に、イントネーションが独特な英語はリスニングがとても難しい傾向にあります。
しかし、韓国人の様に”f”の発音ができず、”p”に聞こえる発音であっても、英語のイントネーションにさえなっていれば、苦労せずに聞き取れますし、理解ができます。
2つを比べた時に、明らかに後者の方が聞き取りが容易なんです。つまり、イントネーションを修正する方がプライオリティが高いわけです。
日本人の苦手な”th”は、’t”や”d”で代用可能です。
試しに騙されたと思って“I think”を「アイ ティンク」と”t”で発音してみてください。
絶対に通じます!
とは言え、より高いレベルでスピーキング力を向上させたいのであれば、英語の発音に慣れる必要もあります。
正直に言えば道のりは遠いですが、初めの一歩をお手伝いすることはできます!
現地のネイティブの子供たちも学校で国語として英語を学んでいるわけですが、その時に使用されているメソッドが「フォニックス」と呼ばれるフォーマットです。
この法則を学ぶからこそ、ネイティブスピーカーは初見の単語でも発音できるわけです。
それこそフォニックスさえ覚えれば、英語の発音を完璧に近づけられるということなのですが、何しろ覚えることが多いので大変です。
そこでまずは基本となる母音のマスターの仕方を詳しくまとめました。
“a”は、「ア」と読むのか、「エイ」と読むのか?
母音をマスターすると、スピーキングが大幅に変わります。その理由は?
まとめ
「なぜTOEIC900点も取っている人が、英語を話せないのか?」
スピーキングを上達させるための方法論をまとめようと思ったきっかけであり、出発点は
なぜみんな、その理由を見出そうとしないのか?
この素朴な疑問でした。
初めに話した通り、何か問題が起きた時に、その原因である理由を突き止めない限りは、最適なソリューションなど探しようもありません。
これをみんな重々分かっているだろうに、話がスピーキングができないという問題になると、その理由を考えて解決していこうという流れにならないことが解せませんでした。
理由は明確にした通り、以下の3つです。
・イントネーションとアクセントが全然違う
・リンキングなどで生じるリズムが全然違う
・実際の発音と、その単語の発音記号が全然違う
プロの英語コーチとして、この3つを常に意識してコーチングに生かしており、その成果も確実に手ごたえを感じています。
生徒さんの発音が劇的に変わります。
もちろん、毎日コツコツと練習することが必須であることは言うまでもありませんが、方法論としての実証はできつつあります。
どうしてもスピーキングを伸ばしたいという方は、3つのステップでクリティカルな違いを克服してみてください。毎日勉強するとして、3カ月もあれば劇的に変わるはずです!